映画館の稼働率は2割

映画館の稼働率は2割程度。
つまりは、2割埋まれば利益が出るような構造になっているということ。
ホテルとか航空機とかと比較して考えてみると、ある意味スゴイ。


http://www.bunkatsushin.com/modules/bulletin/article.php?storyid=14525

全国すべての映画館の席数は240万と言われている。これが1日中1年中満員だと1兆円産業だ。しかし昨年、一昨年の全興行収入は2000億円、つまり20%しか席が埋まっていないことになる。


数字の根拠をあげてみる。

1. ざっくりとした計算

日本映画製作者連盟が発表している統計数字から、概算してみる。
過去興行収入上位作品 一般社団法人日本映画製作者連盟

劇場スクリーンが全国に3000強。(2007年末で3,221, 2006年末は3,062だった)
1スクリーン当たりの平均座席数は200席くらいと仮定。
1日1スクリーンで平均4回上映すると仮定。
1回当たりの入場料金は、平均1200円ちょっと(2007年で1,216円)。


ここから1日中1年中満員の場合の興行収入を算出する。
3000スクリーン×200席×5回(1日当たり)×365日×1200円=1,051,200,000,000
1兆円だ。


そして、1年間の映画館の興行収入は、全体で2000億円。
つまり、稼働率は2,000億円/1兆円=20%。


ちなみに、3,200スクリーンとして計算すると18%くらいになる。
3,000スクリーンのままで、1日5回上映すると仮定すると15%くらいになる。
3,200スクリーンで1日5回上映だと、14%まで下がる。

2. 経済産業省の特定サービス産業動態調査から算出

特定サービス産業動態統計調査|経済産業省
調査方法のところに書かれているように、全数調査ではなく、概ね売上の7割程度をカバーするように事業所を抽出する、とある。
入場料収入を見ると、だいたい5割から6割程度まで抽出されていることがわかる。

    2005年 2006年 2007年
入場料収入(百万円) a 118,602 114,908 102,161
入場者数(人) b 101,019,341 98,701,925 90,720,404
入場料平均(円/人) c=a/b 1,174.1 1,164.2 1,126.1
座席数(席) d 293,331 290,228 287,325
スクリーン数(スクリーン) e 1,382 1,362 1,350
1スクリーンあたり座席数 f=d/e 212.3 213.1 212.8
上映回数(回) g 2,683,100 2,616,841 2,557,337
1日当たり上映回数 h=g/e/365 5.3 5.3 5.2
稼働率 i=b/g/f 17.7% 17.7% 16.7%

3. 損益分岐点稼働率の推定

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(2007年4月〜6月『調査報告「シネマコンプレックスの現状と課題〜転換期にさしかかったシネコン経営〜」』より)


大元は、経済産業省編『特定サービス産業実態調査報告書映画館編(平成16年)』なので、売上等に関しては2.とおなじということになる。

  単独館 複数の映画館同居ビル ショッピングセンターとの同居型 備考
年間延べ座席数 79,476,560 169,897,280 404,466,720 a: 総座席数*4交代/日*365日
収入単価(円) 1,567 1,580 1,603 b
変動経費単価(円) 834 977 965 c
固定経費(百万円) 6,187 16,746 38,018 d
損益分岐点の平均座席占有率 10.6% 16.3% 14.7% e=d/(b-c)/a


1日4回上映という仮定での損益分岐点が、シネコン(ショッピングセンターと同居型)では15%弱という結果となっている。
この推計でいえば、稼働率15%で採算ラインにのるということが言えよう。

参考

参考になりそうな文献。

特定サービス産業実態調査報告書 映画館編〈平成16年〉

特定サービス産業実態調査報告書 映画館編〈平成16年〉

映画ビジネスデータブック 2008 (キネ旬ムック)

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図解入門業界研究最新映画産業の動向とカラクリがよ~くわかる本 (How‐nual Industry Trend Guide Book)

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新・外国映画ビジネスが面白い (キネ旬ムック)

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