ポイント引当金関係の仕訳


ポイントに関する仕訳について。
http://management.kndb.jp/entry/show/id/193
http://management.kndb.jp/entry/show/id/194
リンク先の記事にて会計処理について書いてあるのだけれど、基本的に間違っている(部分的には正しい)と思われるので一言。


ポイントの費用処理の方法と考え方

http://management.kndb.jp/entry/show/id/193

実務上、大別すると以下のような会計処理が行われていると考えられる。
(1) ポイントを発行した時点で費用処理
(2) ポイントが使用された時点で費用処理し、期末に未使用ポイント残高を引当金計上
(3) ポイントが使用された時点で費用処理(引当金計上しない)


上記のうち(2)の会計処理が多くなっている。


ここについてはこの通り。
望ましいのは(1)または(2)で、(3)の処理はポイント残高がかなりの金額になる場合には間違った処理と見なされることになるだろう。


そして処理方法については、費用処理をいつ行うかという点(上記の場合分け)での違いがある他、ポイント付与を売上値引と考えるか、販売促進と考えるかでも異なる結果となる。


従って会計処理としては、以下の4通り(上記(3)は除く)がある。

  ポイントは売上値引 ポイントは販促費
発行時点で費用処理 A B
使用時点で費用処理&引当金計上 C D

引用記事の誤りについて

ポイント使用時の処理

ポイント使用時に費用処理&期末でポイント残高に対して引当金を計上という場合についてのポイント使用時の処理が次のように記載されている。
http://management.kndb.jp/entry/show/id/194

(2) ポイント使用時点
ポイント使用時点において費用処理。
売上原価*2 28 / 商品*2 28(又は販売促進費
*2 利用ポイント 40円分×商品の原価率70%=28円


この仕訳が正しいというためには、次の前提が必要だ。
・ポイントが使用された場合に現金受入額のみを売上に計上し、それに対して売上原価率を一定として売上原価を計上している。
たとえば100円の商品について40円分のポイントが利用された場合、以下のような仕訳が行われている。
現金 60 / 売上 60
売上原価42 / 商品 42 (42=売上60×原価率70%)


これに対して、本来100円の商品の売上原価は70のため、次の仕訳により修正することが必要となる。
売上原価 28 / 商品 28(これが上記引用の仕訳)


この仕訳をすべてあわせると、次のようになる。
現金 60 / 売上 60
売上原価 70 / 商品 70


この売上の60円は、売上100円に対して売上値引40円を控除した結果であり、ポイントの使用を売上値引として処理するという考えに基づくことになる。
こう考えれば、上記仕訳は正しものといえる。


それでも「又は」と記載のある方法で、売上原価を販売促進費にして仕訳を行ってしまうと明らかに間違った結果となる。
販売促進費 28 / 商品 28
を加えると、この商品の売り上げに関する仕訳は以下のようになる。
現金 60 / 売上 60
売上原価 42 / 商品 70
販売促進費 28

これでは、なんのこっちゃ??という仕訳だ。
ポイント使用を販売促進費と考えるのであれば、仕訳は
現金 60 / 売上 100
販売促進費 40
売上原価 70 / 商品 70

という結果とならなければならないからだ。


ポイント使用時点での仕訳は次のように記載すべきだろう。
100円の商品について40円分のポイントが利用された。
現金 60 / 売上 100
売上値引(または販売促進費) 40
売上原価 70 / 商品 70


簡潔に言えば、ポイント使用時の売上について、ポイント使用分を除外した形で売上計上(同時に予定売上原価率を用いて売上原価を計上)するという暗黙の前提が間違っているということになる。


引当金計上時の仕訳についても同様のことがいえる。
http://management.kndb.jp/entry/show/id/194

・ポイントは、当期に 40円分が当社商品の購入に使用され、未使用残高については、
過去の使用実績から、翌期以降に 50円分の使用が見込まれる

(3)期末
未使用残高について引当処理。
ポイント引当金繰入額*3 35 / ポイント引当金*3 35

3 翌期以降に使用見込のポイント 50円分×商品の原価率70%=35円

この方法は、前述のように、売上を現金受取額のみで計上し、売上原価をその売上に連動させて計上するという暗黙の前提がある場合にの正しいといえる。
しかしながら、そのような処理自体が誤りであり、このポイント引当金計上についても謝ったものといえる。


翌期以降に50ポイントが使用されると予想されるので、引当金は50円分計上しなければならない。
ポイント引当金繰入額 50 / ポイント引当金 50



以下、A,B,C,Dの場合の仕訳例を書いていく。

A(ポイントは売上値引であり、付与時に費用処理する)の場合

ポイント付与時

1000円の商品について100円分のポイントを付与する。

現金 1000 / 売上 1000
売上値引 100 / ポイント未払金(*1)100
売上原価 700(*2) / 商品 700(*2)

(*1) 商品券と同じような意味の勘定科目で負債です。名前がわからずとりあえず「ポイント未払金」としてみました。
(*2) 売上原価率70%とします。

ポイント使用時

100円の商品に対して、40円分ポイントが使用された。

現金 60 / 売上 100
ポイント未払金(*1)(*3) 40
売上原価 70 / 商品 70

(*3) ポイント付与時に負債に計上したポイント残高を、ポイント使用時に取り消す

期末時

ポイントの有効期限などがある場合には、失効したポイントについてポイント残高を取り消す。
10円分のポイントが失効した。

ポイント未払金 10 / ポイント失効益(営業外利益or特別利益) 10

B(ポイントは販売促進費で、売上計上時に費用処理する)の場合の仕訳

Aのポイント付与時に用いられる売上値引部分を、販売促進費に変更するだけです。

C(ポイントは売上値引で、ポイント使用時に費用処理する)の場合の仕訳

ポイント付与時

1000円の商品について100円分のポイントを付与する。

現金 1000 / 売上 1000
売上原価 700(*2) / 商品 700(*2)

↑ポイントについては何も処理しない。

ポイント使用時

100円の商品に対して、40円分ポイントが使用された。

・今期付与したポイントが使用された場合
現金 60 / 売上 100
売上値引 40
売上原価 70 / 商品 70

↑40円分を売上値引として処理する。

・前期以前に付与したポイントが使用された場合
現金 60 / 売上 100
ポイント引当金 40
売上原価 70 / 商品 70

↑40円分について、ポイント引当金を取り崩す。

期末時

ポイント発行残高のうち、翌期以降に使用されると予想される金額分について、引当金を計上する。
ポイント発行残高60ポイントのうち、50ポイント(50円分)が使用されると予想。

ポイント引当金繰入額 50 / ポイント引当金 50

なお、この場合のポイント引当金繰入額については、ポイントを売上値引と考えるため、P/L上では売上高から控除すべき項目となる。(とはいえ販管費として処理する場合も多いみたいです)

D(ポイントは販売促進費であり、ポイント使用時に費用処理する)の場合の仕訳

ポイント付与時

1000円の商品について100円分のポイントを付与する。

現金 1000 / 売上 1000
売上原価 700(*2) / 商品 700(*2)

↑ポイントについては何も処理しない。

ポイント使用時

100円の商品に対して、40円分ポイントが使用された。

・今期付与したポイントが使用された場合
現金 60 / 売上 100
販売促進費 40
売上原価 70 / 商品 70

↑40円分を販売促進費として処理する。

・前期以前に付与したポイントが使用された場合
現金 60 / 売上 100
ポイント引当金 40
売上原価 70 / 商品 70

↑40円分について、ポイント引当金を取り崩す。

期末時

ポイント発行残高のうち、翌期以降に使用されると予想される金額分について、引当金を計上する。
ポイント発行残高60ポイントのうち、50ポイント(50円分)が使用されると予想。

ポイント引当金繰入額 50 / ポイント引当金 50

なお、この場合のポイント引当金繰入額については、ポイント付与を販売促進と考えるため、P/L上では販売促進費に含めて(あるいは販売管理費の内訳科目として販売促進費と併記して)表示すべき項目となる。

売上値引か販売促進か

売上値引の場合は、消費税が値引後の金額×5%で計算されることになります。
販売促進費の場合は、消費税は元の金額×5%のまま。

そこらへんで、企業がどういう立場をとっているかはわかるんじゃないかと思います。(実態と会計が乖離する場合もあり得ますが)