工事進行基準の話。その2。(7/28追記)

いろいろつっこみが入った。
こういう経験ってあまりないので、ちょっと楽しい。
指摘も、言葉に迷ったところ当たりを的確についてるし。


ブクマでもコメントがついていたので、それにも答えてみる。

進捗度の計算

類は友を呼ぶ!! 頼まれもしないのに横からしゃしゃり出てきて大間違いwww - 消毒しましょ!

おいおいおいおいwww 「進捗度合いを」「開発にかかったお金で計算」なんかしてもいいのか!? 仕事に取り掛かったのはいいが、要件定義がぐっちゃぐちゃだったとか、間抜けな奴がウィルスを撒き散らしてコード全部消えちまったとか、開発メンバー全員がネトゲに嵌って全く仕事してなかったとか、とにかく人件費だけは掛かったけど、案件はなあーんにも出来てなかったとするじゃん? その費用たるや、当初の見積り額と同じ金額が1年目に出てっちゃったとするじゃん?


じゃあさあ!! おめーの言うとおり、「開発にかかったお金」で「進捗度合い」を計るんなら、1年目で開発終わっちゃったってことになるじゃねえかwwww 費用の方は100%発生しちゃったんだからさあwwww どぉおおおおすんだ、こりゃあwwww


正解は、進捗度0。原価の方は、再見積もりした全体の費用中の1年目に掛かった費用の割合でもって計上したほうがいいと思うな。この場合に売上0でも原価を上げるかどうかは会計士にでも聞いてくれ。

進捗度の客観性

進捗度を測る方法として、開発にかかったお金で計算していいのか?という疑問は、引用した部分のような状態じゃなくてもあるだろう。
なんとなく、開発段階が上流から下流へ行くに従い必要なコストが増えていく気がするので、設計段階が終わったら30%とかって考えていても、金額ベースで言うと10%にしかならないということもある。
ただ、設計が全体の進捗の30%に相当するかどうかってのはかなり主観的な判断になってしまうので、できる限り客観的な数値をベースにしたい会計上は、開発にかかったお金という尺度で計算しましょうということになっている。
(なお、それ以外に客観的で合理的な進捗度の見積方法があれば、その方法で構わないとなっている)

進捗度の計算方法

進捗度の計算方法は、正確には以下のようになる。
今年度の進捗度=(過年度も含む今年度までに発生した総原価/開発全体にかかる見積総原価)−当期首の進捗度


ここで重要なのは、開発全体にかかる見積原価というのは、毎期末検討し、必要があれば見直す必要があるということ。

予想以上にお金がかかった場合

なので、1年目に予定費用の全額つかっちゃったけど開発全然進んでない状態で、進捗度が100%になることはありえない。


たとえば、開発当初の見積原価が1,000万円。
初年度にかかった費用が1,000万円。でも開発は終わっていない。
この場合、当然ながら見積原価を変更する必要がある。
開発終了までの見積原価を見直したところ、3,000万円必要となった。
当期の進捗度は1,000万円/3,000万円=33%となり、受注金額の33%を計上する。


進捗が全くなくて金額で計算することの方が明らかに不合理だということであれば、進捗度をゼロのままとして売上は計上せず、製造業における仕損品みたいなかんじで売上原価の内訳科目として計上するとか、原因が異常なものであれば特別損失に計上するということもあるとは思う。


顧客都合による仕様変更、追加など

ブクマコメント。

2008年07月27日 NOV1975  あとは顧客都合の仕様変更・追加をどう会計に反映するかがわかれば…


顧客都合の仕様変更・追加なども基本的には同じ考え方をする。
仕様変更や追加などで見積原価が増加したら、進捗度の計算の分母を修正することになる。受注金額を増額させたならば、そこも変更する。


たとえば。
受注金額5,000万円。初期見積原価4,000万円のとき。

  • 1年目

開発に1,200万円にかかった。
進捗度=1,200/4,000=30%。
1年目売上計上額=5,000万円×30%=1,500万円。

  • 2年目

開発費は1,500万円だった。機能の追加要請があり見積原価が5,000万円にアップ。受注金額も6,000万円に変更。
進捗度=(1,200+1,500)/5,000=54%。
2年目までの売上計上額合計=6,000万円×54%=3,240万円。
よって、2年目の売上計上額=3,240−1,500=1,740万円。


こんなかんじで、基本的には当期の売上計上額に修正が入ることになる。


場合によっては、1年目より2年目終了時点の進捗度のほうが少ないという事態に陥ることも考えられる。
初期見積3,000万円。1年目開発費1,200万円。
2年目開発費1,000万円。見積原価が変更され6,000万円に。みたいなケース。
1年目終了時点で40%(=1,200/3,000)だったのに、2年目終了時点では37%(=(1,200+1,000)/6,000)くらいになっちゃう。
こういうケースにどうするかはわからないなあ。当期の売上がゼロになるのは確実として。3%の売上減少分は、過年度の修正として特別損失に計上したりするかもしれないしそのまま放っておくかも知れない。
よほどの異常事態がない限りこんなコトは起きないようになってなくちゃいけないわけだけど。それが頻発するようであれば、会社としてどうなのよ?という話になっていくと思う。

前年度への波及?

ロゴスを舐めてっから、モノを理解できねえんだよ!! - 消毒しましょ!

「ペナルティー的売上減(または無し)という自体になったとき」ゃ、決算修正だあ。100百万円の案件を2年越しで片付けるとして、その場合の見積もり原価が80百万円だったとするだろ? 1年目が終了したときの進捗度が50%だったなら、売上50百万円・原価40百万円だ。「トラブルが発生し」、全体の見積原価を110百万円に変更せざるを得なくなった場合には、原価を55百万円に修正しなくちゃならない。更に、「ペナルティー」くらって90百万円しか貰えなくなったならば、売上は45百万円に減る。赤字額は10百万円だあ。

会計わかんね - novtan別館

これを読む限り、波及するのね。赤字も前年度に計上されるなら、税金も返って来るのかな…会計年度3年またぎ案件とか考えたくもないなあ。


こういうことは基本的にできない。
進捗度は発生済みの開発費を基準に考えるので、進捗度を決めてその後原価を算出するという上のような手順にはなり得ない。
進捗度を金額とは別に出す方法も(金額ベース以上に合理的であれば)認められると思うが、その場合も原価は実際に発生した額を計上することになり、進捗度の見積によって売上が変わることはあっても、原価が変わることはない。


なお、ペナルティによる売上減は、当期分の売上の減少として処理する。
前期に全ての売上計上が終了していて、当期にペナルティで受取額が減りますとかってなったら、前期損益修正損を特別損失として計上する。(総会で一旦承認された決算書を修正というのは基本的にしないことになってるんじゃなかったか。税務上はよく知らないけど、当期に損失計上すれば当期分の税金が減るわけだし、過年度を修正して還付とかやるより楽なんじゃないのかな。)

分割検収

会計わかんね - novtan別館

「出来上がった分だけ検収してもらって売上計上すりゃいいんだよ」ってのは?

基本設計書納品、詳細設計書納品、コード及びテスト実施結果納品、結合テスト実施結果納品、システムテスト実施結果納品、とすると、それぞれは完成の意味になるのかな。この場合、契約がそれぞれの工程ごとになるから、売上もちゃんと工程毎に発生するよね。

そうじゃなくて、設計からテスト、リリースまで一括して受注した場合、途中の工程ごとで「検収してもらって」なのかな。検収を客がしてくれなくても、見かけ上工程が進んでいたら売上が発生した「ことにする」(ってのが見做す、ってことだよね?)ってのが工事進行基準なんでしょって思ってたんだよね?まだぐちゃぐちゃだwww


設計書を納品して、そこで契約を切って別会社にその設計書を持っていったら続きを開発してくれる、みたいに、分割したそれぞれの契約が切り離し可能で実質的に一つの受注契約じゃないですよ、ということが理屈上説明できればこういう分割検収でも構わないと思う。
ただ、工事進行基準が適用されるようになると、そちらとの整合性もあるのでそのまま認められるのかは不明。


別契約にしてそれぞれの段階で受注金額が出ているので、それがそのまま進捗度の合理的な見積になるという考え方をすれば、工事進行基準の適用といえるかも。

ところで

ロゴスってなに?

追記:仕様変更等が追加契約の場合

さらにブクマコメントについて。

NOV1975  仕様変更・追加にかかる追加工数は別契約、というのが原則(後追いでどこかの工程で合流)ですが、一緒に会計しちゃって良いのですか?


仕様変更による追加作業などが本契約とは別に契約された場合の処理はケースバイケースで、別の受注制作として考えることも、本契約における受注制作に含めることもできるんじゃないかと思います。


契約が別だからといって、売上計算も別にしなければならないというわけではなく、実態がどうかという視点で考えればいいです。


たとえば、検収については、本契約と追加契約が一体となって納品・検収されるという場合(検収書は二つ発行されるかも知れませんが)は実質的に一つの案件とみなせるんじゃないでしょうか。
また、社内で追加作業も本体プロジェクトに含まれると認識されていて、原価集計なども区別せずに行われているのであれば、これも実態として一つの受注制作案件とみなせるでしょう。
こういった場合は、売上計上についても一つとみなして計算することになるとおもいます。


逆に、本契約とは別に納品や検収が行われる場合や、社内で別プロジェクトとして管理されている場合には別案件として考えることになるかと思います。


追加契約を別案件として考えるときは、その追加作業の開発が1年超かどうかで進行基準か完成基準かを判断するところからはじめるので、いくつも追加契約がある場合は煩雑という気もします。(同じシステム作りなのに、進行基準と完成基準が混ざるとかイヤすぎる)