アニメ制作の業界慣行にガイドラインを

アニメ制作の構造は、多層構造になっている。
製作者が元請制作会社にアニメ制作の発注を行う。そして元請制作会社は、制作の一部を下請会社に外注する。下請会社はさらにその一部を他の下請会社に外注する。


以前の公正取引委員会の調査結果で問題となっていた点は大きく3点あった。

1,2点目は、製作者が元請制作会社への発注する時のもの。
1点目は取引金額の協議。製作者のほうが立場が強く低い制作費で受注せざるを得ないような状況が存在している。
2点目は著作権の帰属。著作権(財産権)がすべて製作者に譲渡されることが多く、作品がヒットしても元請会社への恩恵が少ない。


3点目は、元請会社から下請会社または下請会社から他の下請会社への発注時のもの。
発注書や契約書を取り交わすことが少ないことが問題で、そのせいもあり事後的な条件の変更や納品後に無償での手直し作業を要求されるなどといったことが半ば慣行となっている。


その公正取引委員会の調査結果を受けて、経産省がアニメ制作の業界慣行についてガイドラインを作成するとの記事。


アニメ産業を保護・育成 下請けで経産省ガイドライン策定へ
http://sankei.jp.msn.com/economy/business/090321/biz0903211914004-n1.htm

 宮崎駿監督の作品がアカデミー賞を受賞するなど日本発アニメに対する国際的な評価が高いことから、経済産業省は業界の健全な育成を目的としたガイドラインの策定に乗り出すことが21日分かった。アニメ制作業界の下請けをめぐる不透明な取引慣行を是正し、国際競争力の強化を図ることが狙いだ。政府は先にアニメ製作を日本の重要産業として保護・育成する方針を打ち出しており、ガイドライン制定によって報酬などの面でも適正化をめざしていく。

 日本のアニメの市場規模は約2兆円を超えるといわれて、日本とアニメを組み合わせて「ジャパニメーション」の言葉さえ生まれるほど高い評価を受けている。だが、韓国などの海外勢の追い上げも激しくなっており、今後競争は激化することが予想される。

 しかし、製作現場の実態は小規模業者が大半を占め、発注元から極端に低い制作費を押しつけられるなど“下請けいじめ”が行われているとの告発が同省などに寄せられている。

 公正取引委員会によると、制作会社の約63%が資本金1000万円以下の小規模事業者で、発注書が交付されず、発注の取り消しや、著しく低い制作費を押しつけられるなどの事例が頻発しているという。

 ガイドラインの策定は同省がこうした実態を踏まえ、業界慣行の適正化が必要が判断したことによる。

同省は不透明な業界慣行の横行はかえって優秀な人材の輩出や競争力向上の面でマイナスになると判断した。


経済産業省ガイドラインを策定するとすれば、2点目の著作権の帰属に関する部分や、3点目の発注時の取引条件の明確化あたりになるのだろう。
ガイドラインが作られたとして、それがそのまま実行に移されるものなのだろうか?
公正取引委員会の調査をうけてのものなので、そのガイドラインに従わなければ公取法違反になるよという脅しがあれば、それなりの強制力はあるのかもしれないけれど。そういうものなのだろうか。