原作の長短と忠実なアニメ化の難しさ

アニメには、原作がついていることがほとんどだが、その原作を忠実に再現することは中々に難しい。
その一つの理由として、アニメが1クール(12-13話)または2クール(24-26話)、映画の場合は2時間前後と枠が決まっていることが挙げられると思う。

映像120分=小説150ページ=マンガ500ページ

大体の印象として、映像(アニメ、映画)2時間に対する適正な原作の長さは、小説・ライトノベルならば短編(100-150ページ)、マンガならば2,3冊となるような気がする。
下記の引用を見ても、それほど大きなズレはないだろう。


http://semiprivate.cool.ne.jp/blog/archives/000686.html

マンガの短編(30p前後) → 小説のショートショート
マンガ中編(本一冊) → 小説の短編
マンガの長編(3〜6冊) → 小説本1冊
マンガのシリーズもの → キャラクタ小説・大河小説


http://d.hatena.ne.jp/m_tamasaka/20070922/1190465289

これは実際にそのとおりで、ライトノベル1巻に対してマンガ3巻分は最低かけないと、原作ファンが納得する密度のマンガは作れません。


アニメは1クールの作品でもライトノベル数巻分の内容を消化します。マンガになおすと10巻くらいになる分量です。これをアニメ放送の前後の掲載期間でまとめろとか、全3巻にしろとか言われてもどだい無理な話で、強引にやろうとすると省略だらけの原作ダイジェストに堕してしまいます。


最低でも1:3の比率は死守する。これは絶対です。


映像120分=小説150ページ=マンガ500ページ
単位を時間・ページに直すとこんなかんじだろうか。


小説1冊200ページ超をアニメ化しようとすると、映画には収まりきらず、テレビアニメだと6,7話くらいになる。
アニメを1クール13話(本編300分くらいか)作ろうとすると、小説で2冊分。マンガならば5,6冊。
2クール26話作ろうとすると小説4,5冊、マンガで10冊ほどとなる。

原作モノのテレビアニメ化の難しさ

アニメは1クール・2クールというフォーマットがある。
そして、小説・マンガのクライマックスが、アニメの枠にちょうどあてはまるようにできていることは稀だ。
そのため、原作モノのアニメは、その制限の中で作品として完結させることを目指すため、原作の忠実なアニメ化がとても難しくなる。


原作のクライマックスにあわせて、話を端折る。原作が未完のため、その前のどこかの段階でムリに完結させる。原作が短すぎるためオリジナルのエピソードを加える。といった調整が必要になる。


特に、ライトノベルのアニメ化が非常に難しくなるように思う。
たとえばアニメを1クール作ろうとすると、どうしても2-3冊分の分量が必要となる。
ライトノベルは、大抵始めの1冊はそれだけで完結もできるし、続編を描くこともできるようになっている。
そして、評価が高かったり人気があった場合には以下続刊とシリーズとして続くことになるが、その場合、2冊目以降で風呂敷を広げる作業が行われ、2冊目・3冊目で綺麗に完結することはない。
始めの完結する1冊だけでは、尺が足りない。
2冊目、3冊目を続いて描くと中途半端な形でシリーズが終わってしまう。
その結果、1冊目の話をベースに2冊目以降のエピソードを差し込むことで話を膨らますといった形になり、展開にムリが生じてしまったりアニメを通して注目すべき主題がぶれてしまったりという危険性が増すことになる。


また、この観点からは、1話完結型のマンガ等のアニメ化は親和性が高いことになる。
最終目的が始めから明確な原作についてはアニメ化しづらい。逆に、はっきりとした目的はないものの一つ一つのエピソードが関連を持って続くものや、登場人物の日常(時に非日常を含め)を描くものはアニメ化しやすい。


最後まで原作に忠実にアニメ化を行い、「続きは原作で」と投げてしまうのも可能かもしれない。アニメは、原作の広告宣伝メディアでしかないと割り切ってしまえばいいというわけだが、アニメの制作者が容認できることではないだろう・・・。