製作委員会の存続期間

製作委員会の存続期間は、著作権が存在するかぎりなのかな?という話。


先のエントリにおけるコメントのやりとりで、製作委員会は解散されずずっと存続するものだよという言葉をいただいた。

アニメにおけるパチンコライセンスの収入 - Obra de Sobra よしなしごとにて

とおりすがり 2008/03/02 17:11
ちなみに製作委員会は、作品の著作権が切れるまで存続します。
製作委員会方式が始まってまだ15年くらいしか経ってないからこの先どうなるかわからないけど。

通りすがり 2008/03/02 20:30
製作委員会が数年で解散するわけではないのには理由があります。
もちろん、出来うる限り早期に収益を得ようとしているのはまちがいありませんが、長期的な収益も視野に入れているからです。


これは、現在のDVDソフト販売が頭打ちになっている状況下でも製作される作品数が減らない理由でもあります。
作品が製作されて長い時間がたった後に、新たな市場が形成される可能性があるからです。
実際にそのような出来事が起こりました。
それは海外販売です。
放映権やDVDソフトの販売権などを売ることで予想外の利益があがったという歴史があります。


各社が現在の収益性をある程度捨ててまでコンテンツホルダーたらんとしている理由は、今後の新たな市場開発に期待しているからです。
作品数を持っていれば持っているほど有利、という状況ですから。


パチンコ、パチスロに版権を許諾するのもそのひとつですし、ネット上で新たに収益が上がる可能性もあります。
YOUTUBEニコニコ動画等から版権料が徴収出来る体制になる可能性もあります。


各社が製作委員会に入りたがるのは、コンテンツホルダーであることそれ自体の優位性が大きな理由のひとつなのです。


いただいたコメントだけで、一つのエントリ分以上の価値がある。
個人的に、製作委員会というのは数年で解散し、幹事会社などが著作権を買い取るものだと思いこんでいたのでいくつか存続期間に関する情報を探してみた。

「数年で解散し著作権は1社に帰属するが、経済的権利はそのまま」説

製作委員会方式の問題点と打開策: 信託大好きおばちゃんのブログ

 この民法上の組合の問題点として、著作権が共有になることです。映画が上映されてから数年間はなんとかなるのですが、何十年もたつと組合員の中には倒産するところもあるかもしれません。そんな時期に著作権を譲渡しようとしても組合員が行方不明で、承諾がとれず宙ぶらりんになる可能性もあります。

 どうするのかなと疑問に思ってたのですが 松田政行 「コンテンツファイナンス」 日刊工業新聞社 P107によると、大体映画の利用、二次利用によって85%の回収が5年程度でできるそうです。残り15%は65年で回収が見込まれる。(著作権の存続期間は著作物の創作時から著作者の死後50年までなんだけどなあ)

 そこで当初の契約で、利益がおおよそ予定される時期(たぶん5年以降)に、配当、損失の負担を確定させて、任意組合を解散させ、著作権は、組合員の誰か1人ないし一社に独占的に集約させます。

 通常は業務執行組合員が著作権取得者になり、他の組合員に対してロイヤリティの支払いは継続して行っていくというようにするようですね♪

「製作委員会は解散せず細々続く」説


II 章 アニメーション製作者の役割
5.3 アニメーション製作委員会の法務実務に関わる問題

( 1) 製作委員会の清算
 製作委員会が著作権をシェアするということであれば、 本来は、 著作権が消滅するまで存続するというのが大前提になると思われる。 しかし、 たまにしかお金が入ってこないようになったのに、 分配作業を頻繁にやるのは手間として大変である。 したがって、 ある一定期間を過ぎると、 まず分配の作業を年1回にするという形で、 省力化を図っていくことが行われる。 そうはいいながらも、 基本的には著作権存続期間は製作委員会が残るというのが基本である。
 しかし、 著作権はその存続期間が長いこともあり、 お互いの管理の手間という部分を考えて、 製作委員会を組成する契約の中に清算条項、 任意の脱退を認める条項、 破産そのほかの事由による除名条項などが定められている。 なお、 そもそも民法上の任意組合であるので、 民法に則った清算処理が当然可能であると思われる。

「解散しちゃうよ」説

ちょっと考えたいアニメの「製作委員会」という罠 - 愛・蔵太の気になるメモ(homines id quod volunt credunt)
コメント欄にて。

おっしゃるとおり、非常に面倒なことになるので、実務では利用利益の9割方が完成する5年目ぐらいにに組合(製作委員会)を解散し、権利関係を一社に帰属させます(組合員に帰属させる場合は組合をつくるときに前もって組合契約にしておいたり、他者に譲渡する場合は譲渡後の利用価値を算定しそれを基準にして対価取得後組合員に分配します)。

「解散したとしても、著作権は共有のまま」説

総務省|コンテンツ取引市場の形成に関する検討会(第5回)
資料2 コンテンツ取引市場の形成に関る資金調達方法について

組合終了後の著作権が各組合員に帰属→流動性問題解決できず


製作委員会方式の欠点の一つとして4ページに上記の記述がある。

契約により多種多様?


II 章 アニメーション製作者の役割
5.3 アニメーション製作委員会の法務実務に関わる問題

( 2) 製作委員会に係る法務実務の煩雑性
 製作委員会を組成する契約は、 様々な理由により煩雑さを解消できずにいる。 その理由としては、 製作委員会のメンバーの組み合わせが毎回少しずつ異なること。 ビジネスのスキームが毎回異なること。 各社には各社の標準契約書があり、 折り合いがつかないこと。製作委員会の中で一定の考え方がまとまったとしても、 製作委員会と契約を結ぶ制作プロダクションなどとの間の契約が翻って影響し、その都度協議をやり直す必要が生じること。また、 テレビ局が枠によって、 編成局扱いと営業扱いに別れ、 それぞれ契約内容が異なること。 同時に、 広告代理店の担当部署も違ってくること、 等がある。
 また、 出資の多寡にかかわらず発言権は一緒であるため、 見解を異にする者が1社でもあると、 話がまとまらなくなるという危険がある。 幹事会社が、 幹事手数料をたくさん取りたいと主張する場合もあれば、 幹事手数料は少なくても構わないという場合もある。
 換言すれば、 座組みやビジネススキームが異なる以上、 契約が同じになる要素はない。しかし、 いろいろな実務経験を積み重ねていくうちに、 各社歩み寄り似た部分が標準化されていく可能性はあると思われる。


とあるように、座組によって契約が多種多様なものとなり、存続期間を定めて解散をするのか否か、解散した場合に著作権を共有するのか否か、しない場合に出資者の経済的権利を1社が買い取るのか否かなどが異なるということなのかもしれない。