日本独自仕様のディズニーアニメ

ディズニーが、日本市場をターゲットとして、made in Japanのアニメを製作するというニュース。

ディズニー、日本市場向けアニメ制作・放映へ 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News

【3月6日 AFP】米娯楽大手ウォルト・ディズニー(Walt Disney)」は6日、日本のアニメ制作会社と提携し日本市場に特化したアニメーション制作事業を開始すると発表した。


 ウォルト・ディズニーは米本社が制作した映画を全世界に配給するのが従来方針。同社の日本法人ウォルト・ディズニー・ジャパン広報も、海外市場に特化した映画制作は「ほとんど前例がない」という。


 こうした方針転換について同広報は「日本でのディズニーキャラクターの知名度は非常に高く、特に日本の消費者を対象とした市場の拡大が必要で、日本人の趣向に合った作品を提供するため」と説明した。

 
 まずはアニメ制作大手「東映アニメーション(Toei Animation Co.)」と手を組みロボットが主人公の短編映画を制作、5月か6月をめどに衛星放送「ディズニー・チャンネル」などで放映する計画だ。


 このほか、中堅アニメ制作会社「マッドハウスMadhouse Ltd.)」と提携し、人気ディズニーアニメ「リロ・アンド・スティッチLilo and Stitch)」の舞台を日本に置き換えた日本版の制作も企画しているという。


 同広報は「日本製ディズニー映画は基本的に日本市場が対象」としながらも、「アジア諸国への輸出の可能性もありうる」と語った。しかし、アニメクリエーターやコンピューターグラフィクスなど制作は全て日本人が手掛け、人件費の安いアジアへのアウトソーシングは行わない方針だという。

ハリウッド映画の世界への押し売り

ディズニーは、ハリウッド映画におけるアニメーションというジャンルを作り上げた会社だ。
ハリウッド映画は、アメリカ人向けに制作した映画をそっくりそのまま(吹き替えくらいはするけれど)海外に流通させるシステムを作り上げることで、莫大な製作費と非常に高い質の映像で全世界の映画界を席巻した。
映画興行におけるハリウッド映画のシェアが50%を切る国というのはほとんどないといって良いくらいの状況だ。


ディズニーも、当然のことながらアニメーション映画というジャンルでハリウッド映画のシステムに乗っかり、アメリカ人向け(あるいは全世界向け)の映画を世界に売るということをしてきた。
その方針を転換し、日本市場向けの作品を製作するというのだから、かなりの大事件なんじゃないだろうか。

ディズニーの思惑

日本では、アニメーション映画は成功できても、ディズニーのテレビアニメはそれほど成功していない(ような気がする)。
世界各地にあるディズニーランドの中でも群を抜く東京ディズニーランドの集客力や、ディズニー映画が日本においても十分な成績を残している状況を考えれば、日本のテレビアニメ事業でもディズニーブランドが大きな収益を得るだけの素地があることは疑う余地はない。


それが成功できていないのは、アメリカ向けに制作されたテレビアニメに日本人の好みとかなりのズレがあるからという可能性が高く、その解決策として、日本市場に向けたテレビアニメを日本で制作するという戦略を採用したんじゃなかろうか。


また、トイ・ストーリーの成功あたりから、ハリウッド映画におけるアニメーションは3Dに移行がはじまり、現在2Dアニメは映画では姿を消している。
ディズニーが一度2Dアニメスタジオを閉鎖している(その後ピクサー買収後に復活させた)ことなども、日本のアニメーションスタジオによる制作を行うことの理由なんじゃなかろうか。

日本のアニメ業界への影響

ここから先は、適当な話。言いたい放題書いてみる。


アメリカのアニメは、日本のようなリミテッドアニメーションではなくフルアニメーションという話があった。今のアメリカのテレビアニメはそうでもないのかもしれないが、それがなくともアメリカでのアニメ制作費は、日本のそれにくらべてかなり高額だろう。
ディズニーのアメリカでの制作予算が日本での制作にも適用されるとすれば、そのアニメは他のテレビアニメに比べて非常に質の高いものとなることが確実だ。
それは、そのままディズニーファン以外のアニメファンへの競争力を持つことにもなり、現在の日本のテレビアニメにとっては不利に働くこともあり得る。
制作会社にとってみれば予算の高い仕事が増えるわけで制作会社は潤うことにもなるかもしれない。


ディズニーが日本向けに製作するテレビアニメのメインターゲットは、アニメファンではなく、もっと(たぶん)規模の大きなディズニーランドへ足を運ぶ層だろう。
その層が、ディズニーのテレビアニメを受け容れることになれば、それはそのままアニメ業界全体のパイが膨らんでいくことを意味する。その層を相手に十分なビジネスが展開できることがわかれば、日本のアニメ業界も新たな収益源を獲得することになる。


さらにさらに。
ディズニーが2Dアニメ映画を日本で制作するなんてことになれば、(そして交渉で制作会社が著作権の一部を持つことができれば)非常におもしろいことになるんじゃないのかな。
2000年くらいからジブリ以外のアニメ映画を大ヒットさせようという試みがされつづけているわけだが、なかなかうまくいっていない。そこがジブリ+ディズニーとなったところで大して変わらないよという話になるのかもしれないが、大人(ファミリー)向けアニメ映画の存在感が増せば、次なるジブリ・ディズニーが出てくる可能性も高くなるというものだろう。