コンテンツの寿命を延ばすメディアミックス

最近始まったテレビドラマ『ガリレオ』。
東野圭吾の「探偵ガリレオ」シリーズを原作としたものだそうな。
その「探偵ガリレオ」シリーズの長編がテレビドラマと同じキャストで映画化されるというニュースがでた。


http://www.sanspo.com/geino/top/gt200710/gt2007102201.html

ガリレオ」原作“お化け小説”が映画化!福山&柴咲ら出演

 人気作家、東野圭吾氏(49)の直木賞受賞作「容疑者Xの献身」が初めて映画化されることが21日、分かった。現在放送中のフジテレビ系月9ドラマ「ガリレオ」(月曜後9・0)の原作である探偵ガリレオシリーズ初の長編作で、ミステリー小説人気ランキング3冠を達成した“お化け小説”。主役を務める福山雅治(38)をはじめ、内海刑事の柴咲コウ(26)らドラマレギュラー陣が映画版でも大暴れする。
(略)
 フジテレビの映画事業局を統括する亀山千広同社執行役員常務は「各社のオファーが殺到する中、映画化する権利を得ることができたのは、テレビドラマから映画まで一連のプロジェクトとして映像化の提案をすることができたから」と経緯を説明、「2008年のフジテレビ映画の大きな柱になることは間違いない」と期待を込める。
(略)
 メガホンをとるのは、ドラマの演出を手掛ける同局の西谷弘氏で、映画の監督を務めるのは「県庁の星」以来2度目。主役で“変人”の天才物理学者、湯川学を福山が演じるほか、新米刑事の柴咲、草薙刑事の北村一輝(38)らドラマレギュラー陣の出演も決定。スクリーンの中でスケールアップした活躍を見せてくれそうだ。


 映画は来年初旬に撮入し、来秋公開予定。


ここ数年、テレビドラマの映画化や、売れた映画のテレビドラマ化など、テレビと映画のメディアミックスが盛んになっている。


テレビドラマの映画化(逆に映画のテレビドラマ化)の効果の一つに、作品寿命の長期化がある。
テレビドラマ単体の場合、放送時(四半期)後は、DVDレンタルや販売や再放送などによって収入を得ることになるが、放送後の話題作りができないために、2次利用の収入がそれほど多くは見込めない。映画も、劇場公開時とDVD販売・レンタル開始時にも宣伝活動を行うがその後の需要喚起を行うことができない。それぞれ、単体としては寿命が短いためにかけられる宣伝費用も宣伝方法も限られてくる。


テレビドラマと映画を組み合わせることで、お互いの寿命が延びるという効果が期待できる。
四半期のテレビ放送を行い、その半年・1年後に映画を公開するという形をとれば、その作品の寿命は1-2年に延びる。
テレビドラマの映画化では、映画の公開やDVD販売直前にテレビドラマの再放送を行うことで映画の収益の最大化を図ることができる。また、映画を見た人が同じキャストでテレビドラマがやっていたことを知ればテレビドラマのDVDレンタル・DVD販売へと結びつく。その結果、テレビドラマでは四半期、映画でも劇場公開とDVD販売・レンタル開始後のそれぞれ1ヶ月程度だった寿命を大きく引き延ばすことができる。
また、宣伝についても、テレビドラマの映画化ならば映画化についての話題のつどテレビドラマがあることをPRできるし、映画のテレビドラマ化ならばテレビドラマと同時に映画のDVD販売を行うことができる。また、四半期や半年では難しいグッズ販売なども1年2年の寿命があれば可能となる。


今回が初めてというわけではないのかもしれないが、映画化を前提としたテレビドラマの企画(映画とテレビドラマがセットの企画)が出てきたことが非常に大きな意味を持つように思う。
以前は、テレビドラマがヒットしたから映画化をする、映画がヒットしたからドラマ化するというように、同じ作品を複数のメディアで展開するのだけれども、その一つ一つは別のプロジェクトだった。当然、宣伝や利益計画なども別々で、作品全体を通して利益を得るという視点がなかった。


それを、テレビドラマと映画を組み合わせた2-3年間のプロジェクトとすることでテレビドラマの放送、DVDのレンタル・販売、再放送、映画の劇場公開、映画のDVDレンタル・販売のタイミングを最適化し、さらに長期プロジェクトだから可能となる収益獲得方法の模索・確立などもできるようになる。

追記(2007.10.28)

http://www.fujitv.co.jp/fujitv/news/pub_2007/07-323.html

 映画事業局を統括する亀山千広(フジテレビ執行役員常務)は、「各社のオファーが殺到する中、フジテレビが映画化する権利を得ることができたのは、テレビドラマから映画までという一連のプロジェクトとして、映像化の提案をすることができたことが勝因だと思います」と分析。これまでにも、『西遊記』『HERO』に代表されるドラマから映画、あるいは『ウォーターボーイズ』『海猿』に代表される映画からドラマへの連係プレーで、数々のヒット作を飛ばしてきたフジテレビだが、「今回のプロジェクトは、その立ち上がりから連係プレーをとったことによってこそ企画が実現したという意味で、これまでの例からさらに進化した形」と、亀山。


やはり、映画とドラマを始めから連携させるというのは、今回が初めてのようだ。