制作費を増やすことと、アニメータの仕事単価を上げること。

先日、同じことを書いたのだけど、いろいろ話題が混ざって何が言いたいかよくわからなくなってしまったのでもう一度。

制作費の増加には、仕事単価の上昇と作品の質の上昇の二つの方向性がある。
仕事単価の上昇には、時間単価の上昇と要求水準(=質)の上昇がある。
ということについて。

仕事単価の上昇と作品の質の向上

制作費を増やすことと、アニメータの仕事単価を上げることはイコールではない。
むしろ、制作費の増加が意味するところは、仕事単価の増加ではなく、作品の質の向上である場合が多いように思う。制作費が通常の倍の作品と聞いて思い浮かぶのは、質は変わらずスタッフの収入が上がった作品ではなく、キャラクターがなめらかに、そして激しく動く質の高い作品だろう。


制作費を増やした場合の、増加分の使い途には、作品の質の向上と仕事単価の上昇の二つがある。

  • 制作費が変わらない状況で、仕事単価を上げると、作品の質が落ちるがスタッフの地位は向上する。採算ラインは変わらない。
  • 制作費を増やし、増加分全てを仕事単価の上昇にあてると、作品の質は変わらずスタッフの地位は向上する。採算ラインが上昇する。
  • 制作費を増やし、その一部を仕事単価の増加にあてる場合、作品の質が若干向上し、スタッフの地位も若干向上する。採算ラインが上昇する。
  • 制作費を増やし、その全てを作品の質の向上にあてる場合、作品の質が上昇し、スタッフの地位は変わらない。採算ラインが上昇する。

仕事単価の上昇と、仕事の時間単価

基本的には、作品の質の向上と同じことなのだが。
仕事単価を上げることの注意点として、要求水準がある。

1カットあたりの単価を上げたとしても、要求水準が高くなってしまっては意味がない。
たとえば現状1日で行っていた仕事が、仕事単価が倍になったけれども仕事を終えるのに2日かかるようになったというのでは、制作スタッフの1日あたりの収入は変わらないことになってしまう。

  • 仕事単価は変わらず、要求水準を下げれば、作品の質が下がり、時間単価が向上する
  • 仕事単価を上げ、要求水準を若干あげると、作品の質が若干向上し、同時に時間単価も若干向上する
  • 仕事単価を上げ、その分要求水準を上げると、作品の質は向上するが、時間単価は変わらない


もしかしたら、クリエイターは一つの仕事を納得のいく形にしたいという希望が強く、時間単価は変わらず(=収入は変わらず)とも仕事の質を高めることができるということで、時間単価が上がらなかったとしても仕事単価が上がれば十分と考えたりするのかもしれない。