B-CAS会社の財務諸表
話題になっていたので眺めてみた。
気になる点、気づいた点をいくつか。
まだまだ財務諸表の見方はよくわかっていないので、どの項目が重要かとかってのが直感でわからない。
結構的外れなかんじもありそう。
1.固定資産が少ない
B-CASカード発行会社なんだけれど、有形固定資産は1千から2千万円程度しかなくカードを製造しているとは考えられない。
すべて外注し、発行を行っているのだろう。
2.売上単価が減少傾向、売上原価率が高い。
カード一枚当たり(円) | 2004/3 | 2005/3 | 2006/3 | 2007/3 | 2008/3 |
売上 | 1,431 | 977 | 768 | 680 | 592 |
売上原価 | 1,216 | 883 | 675 | 596 | 544 |
売上総利益 | 216 | 94 | 93 | 84 | 48 |
売上原価率 | 84.9% | 90.4% | 87.9% | 87.6% | 91.9% |
独占企業なので、販売金額横ばいで原価率低減&利益率大幅アップでボロ儲けという方向になるかと思いきや、原価率は85-90%程度で一定。卸売業みたいだ。
カードの原価+何%という形で価格を決定して確実に一定の利益が出るというやり方ということだろうか。
独占してる割には、意外と良心的。
カード1枚あたりの売上高も、2004年3月期の1400円超から2008年3月期600円を切る半値以下まで減少はしている。
3.販管費の不自然な増加
2006年3月期から2007年3月期で、1億2500万円も販管費が増加している。それも2008年3月期は前年と大きく変わっておらず、一時的なものではないように見える。
何が起きているのやら。
4.2008年3月期、謎の特別利益1億円超
特別利益が1億1000万円なのだけれど、固定資産に大きな変動はない。
そもそも、2007年3月期に3000万円しかなかった固定資産を売却して1億円の利益というのも考えにくい。
未払法人税等に大きな変動があるものの、前期まで納税額がゼロだったために2007年3月期の未払法人税等の額が多額になったが、2008年3月期では中間納付を行ったと考えれば特別利益につながるほどの金額の動きはないように思われる。
破綻懸念先の売掛債権に貸倒引当金を積んだけど取り立てできた、とかだろうか??
5.2008年3月期、棚卸資産の急激な増加
棚卸資産が2007年3月期の3300万円から、1億7300万円に増加。
とはいえ、売上原価の規模を考えればひと月もかからずになくなる程度の在庫。期末に大型発注があったとかそんな理由だろう。
6.預り保証金?
預かり保証金ってなんだろ。
B-CASカードは、無期限レンタルだから、実質的には販売と同じなわけで、会計上は引渡時に売上計上されるだろう。
販売先の会社から保証金を取るのかな?それとも外注先?
7.全体的な印象
全体としては、独占企業だからといってボロ儲けというほどではない。
B-CAS会社が不当な利益を得たとしても、それはそのまま株主であるテレビ局やメーカーに配当されるだけなので、その点については大きな弊害はなさそう。
むしろ、販管費や売上原価の外注費の支出先企業が、得体の知れないところだったりしそうだ。
B-CAS会社の株主構成
http://blog.goo.ne.jp/ikedanobuo/e/0b67146c4bfbcb03d5977fa0eff075a3
コメント欄より。
会社概要のページから、なぜか出資比率が削除されていますが、古い記録によると、株主は
日本放送協会 18.40%
?WOWOW 17.70%
?東芝 12.25%
松下電器産業? 12.25%
?日立製作所 12.25%
東日本電信電話? 12.25%
?スターチャンネル 6.50%
?BS日本 1.70%
?ビーエス・アイ 1.70%
?BSフジ 1.70%
?ビーエス朝日 1.70%
?BSジャパン 1.70%筆頭株主がNHKで、社長が歴代NHKの天下りであることもあわせ考えると、もとはBSを有料放送化しようとして設立した可能性が高い。ところが放送法では受信制限が禁じられているので、現在の奇妙な「受信確認メッセージ」が出るのでしょう(地上波では出ない)。
もう一つ目を引くのは、放送と無関係なNTTの出資比率の高さ。SSLの証明書はNTTデータが発行しており、B-CASセンターも認証システムもNTTがつくったものです。したがってB-CAS社は、NTTの認証したカードを発行するだけの完全なトンネル会社です。1枚3000円のB-CASカードの利益は、株主にどのように配当されたのでしょうか。
株主にはBS放送局が多い。そういや、BSデジタルの有料化のためとかってのが始めって話を聞いたような気がする。
ちなみに、配当額は前期末の純資産額+純利益−当期末の純資産額で計算できる。
2006年3月期から1億円弱ずつ配当している模様。
税理士さんの鑑定結果(from GIGAGINE)
地デジで有名な「B-CAS」の財務状況が明らかになったので税理士に鑑定してもらいました - GIGAZINE
・「棚卸し資産」の内容に違和感
「資産の部」の流動資産にある「棚卸し資産」は一般企業で言えば「在庫」に該当するが、業務内容は突き詰めれば「B-CASカードの発行」であり、B-CASカードは各個人に販売しているのではなく「レンタル」している状態。ということは、この「在庫」はレンタルにまわす「B-CASカード」であるはずなのだが、その数が第8期から第9期になる段階で急激に増えている。「B-CASカード」の在庫と考えるにはあまりにもおかしいので、この「棚卸し資産」の内容に違和感を感じる。・「売上原価」が納得できない
損益計算書の「売上高」と「売上原価」の流れを見ると小売業みたいに見える。つまり、B-CASカードの発行枚数が増えれば増えるほど利益も増えるということ。だが業務内容があまりにも不透明すぎ、しかも第8期に比べて第9期は利益率が減少している。B-CAS社の業務内容的にはカードを発行する枚数が増えれば増えるほど「単価は下がる」はずなので、総利益が減少するのは明らかにおかしい。何かがあったとしか思えないが、詳細が不明なのでわからない。・「売上総利益」が減っているのがおかしい
先ほどと重なるが、損益計算書の「売上総利益」が減っているのがおかしい。カードを自前で作っていれば、作れば作るほど単価は下がるはずなのに総利益が減少している。売上総利益には人件費とか電気代とかそういう諸経費は含まれず、粗利になっている。そうであるにもかかわらず売上総利益が減るということは、考えられる理由として仕入れか外注が増加したということだが、それにしても増加する理由が不明。・B-CASカードの原価
B-CASカードの原価が上昇したということも考えられるが、「新商品」としてまったく新しいカードを開発したとも思えず、デザイン変更を大幅にしたわけでもないので、B-CASカードの原価上昇理由が不明。システムなどを外注しているとしても、ここまでの増加はちょっとおかしい。・B-CAS社はただの「トンネル会社」、裏にさらに儲けている会社がある可能性あり
あくまでも感想だが、B-CAS社というのが「トンネル会社」になっている可能性がある。つまり、最大の利益を上げているのはB-CASカードを作っている取引先会社、あるいはB-CASカードに必要なチップなどを作っている取引先会社が黒幕という可能性が考えられる。B-CASカードの仕組みから考えて原価は相当安いはずであり、公開されている財務状況からだと明らかにカードの原価が高価すぎる。一番利益を出しているのはB-CAS社ではなく、カードを作っている会社ではないか。・取引先会社の一覧が必要
今後公開すべきは関連子会社ではなく、取引先会社の一覧。一体どこが儲けているのか、取引先会社がわかれば判明する。・決算書の詳細な内容について
決算書の詳細な内容についてはB-CAS社の主要株主であるNHKやBS日本、WOWOW、松下などが保有しているはずなので、誰かがその内容を公開するのを待たないと実態はわからない。
棚卸資産については、上述のようにB-CASカードとしてもひと月分の販売量にも満たないわけで、一時的に在庫が多かったというだけじゃないだろうか?原価率についても、販売単価を引き下げているのでそれほど不自然ではないと思う。
トンネル会社かもしれない的な話や、取引先一覧が必要といったことは同意見。