私的録音録画補償金の還元方法

私的録音録画補償金の議論が盛んだ。
ただ、補償金を取ったとして、それがちゃんと権利者へ分配されているかどうかの議論を見ることはほとんどない。補償金をとるというのは、公正な権利者への分配ができるということが前提になるべきだが、実際のところどうなのだろうか。

補償金のありかた

津田さんの提案 - Copy&Copyright Diary

その点では、私は津田さんの提案された
DRMがついていれば補償金は不要
補償金をかけるのであれば、家庭内で自由なコピーを認める

という2択はユーザーフレンドリーな補償金制度を構築できるのではないかと思う。

権利者もメーカーもこの津田さんの提案をちゃんと受け止めてほしい。


このDRMありなら補償金なし、DRMなしなら補償金ありという考え方については私も賛成だ。
どれだけ複雑なシステムをつくったところで完璧にはなり得ないシステムなので、むしろ関係者にわかりやすいほうが良いと思う。


ただ、問題なのは補償金の行く末だ。

録音補償金・録画補償金の区別

テクノロジー : 日経電子版

 このようにして集められた補償金はどのように配分されるのか。

 配分の業務を担当するのは私的録音補償金管理協会(SARAH)と私的録画補償金管理協会(SARVH)。この2つの管理団体はそれぞれ、徴収額から団体の運営経費を差し引いた額のうち2割を著作権に関する啓発活動や音楽活動に助成する「共通目的基金」として活用。残り8割を著作権管理団体に割り振る。


私的録音録画補償金は、まず録音(音楽)と録画(映像)とに分配される。
これは、補償金の対象となっているメディアが現在は、録音用か録画用かの判別がつくためその配分比率が問題となることはない。しかしながら、HDDに課金ということになっていけば、その分配基準をどうするかという問題が生じることになる。
たとえばiPodへ課金する場合、音楽がメインではあるだろうが、今は映像を見ることもできる。その比率はどうやって決定するのか?
考え付く方法としては、一定数の利用者をランダムに選び、彼らの持つiPodの中身を見せてもらい、音楽と映像の割合を調べるとかだろうか。それにしても、そもそも音楽1曲のコピーと映像1つのコピーは同じ重みなのかどうかなどの問題も出てくるように思う。

録音補償金の権利者への還元

テクノロジー : 日経電子版

 権利団体間での配分の割合は権利者間の話し合いで決まっている。録音については「日本音楽著作権協会JASRAC)」「日本芸能実演家団体協議会」「日本レコード協会」がそれぞれ36%・32%・32%の割合。


個人的な印象でしかないが、音楽については、録音回数はCD販売枚数やレンタル数に比例する面が強い(ラジオやテレビを音源に録音をするという人は稀だろう)と思われる。したがって、CDの売り上げやレンタル回数を基準に分配を行うことで、比較的公正な権利者への分配が可能と思われる。


しかし、映像についてはそう簡単にはいかない。。


録画補償金の権利者への還元

テクノロジー : 日経電子版

録画については「私的録画著作権者協議会」「日本芸能実演家団体協議会」「日本レコード協会」が68%・29%・3%の割合で配分している。


http://www.sarvh.or.jp/dis/ba_navi.html

私的録画補償金制度は著作権法で、「デジタル方式の録画機器、記録媒体を用いて、個人的にまたは家庭内等で私的使用を目的として第三者の著作物、実演等を録画する者は、これにかかわる権利者(著作権者、著作隣接権者)に対して補償金を支払わなければならない。」と定めた制度です。
補償金の対象となる著作物は、主としてテレビ番組です。

映像の録画・コピーの大多数はテレビ放送の録画によるものと考えられる。


しかしながら、テレビ番組の録画回数に比例する分配基準は見出しにくい。


視聴率に比例するということはないだろう。
たとえば大河ドラマが終わった直後のNHKのニュースなんかは大河ドラマとほぼ同じか少し少なめ程度の視聴率となる。しかしながら、大河ドラマとその後のニュースの録画回数を考えれば、同程度とは到底考えられない。
深夜に放送されるアニメや映画などは、視聴率が良くて3,4%という程度だが、時間帯や映像コンテンツの性質上、かなり録画回数は多くなるだろう。


それを補足する方法は現状、ほとんどないだろう。
録画機器がインターネット接続に対応し、どの番組を録画したかという利用状態を測定することができれば、ある程度の基準を作ることはできるだろうが、その後の二次的なコピーなどを考えはじめるとかなり難しいことになる。


テクノロジー : 日経電子版
上記リンク先の記事には、私的録音補償金の分配方法については、ある程度のことが書いてあるが、録画補償金についてはまったく触れられていない。
記者の方が取材をしなかっただけなのか、取材をしたが返答がなかったのかはわからないが、音楽の分配方法については説明されているが、映像の分配方法が説明されていないという状態となっている。


SARVH(社団法人 私的録画補償金管理協会)のサイトにおいても、どのような基準で分配を行っているかについてはまったく触れられておらず、完全にブラックボックスとなっている。
http://www.sarvh.or.jp/dis/bb_navi.html


音楽についてはともかく、ダビング10などが絡む映像に関して、公正な分配が行われているという実感が得られない状態で私的録画補償金を支払うことについては、そう簡単に納得できるものではないと思う。