配給会社と映画館の利害対立

同じ映画業界にありながらも、配給会社と映画館の利害は対立することがある。
もちろん、映画がヒットすること自体はどちらもが歓迎をするところだ。


ただし、同じヒットといっても意味合いが違う。
配給会社は全映画館での売上に興味があるのに対して、映画館にとっては自分が経営する映画館のみの売上げに興味があるからだ。ここに、利害対立の存在する余地が生じる。


この利害対立は、興行収入全体の最大化と、個々の映画館における収入最大化が一致しないときに起きる。


たとえば、潜在的に240万人の人が見てくれる映画があったとする。
200スクリーンで公開すれば、その200万人が見てくれる。このとき1スクリーンにつき10,000人のお客さんがいることになる。
これを300スクリーンで公開すると潜在的な需要の240万人全ての人が見てくれるとする。このとき、映画館の稼働率は1スクリーン8,000人となる。


興行収入の最大化を目指す配給会社は300スクリーンでの公開を望む。
しかしながら、映画館の経営者は1スクリーンにつき10,000人のお客さんが8000人に減ってしまうため、200スクリーンのままの状態を望むことになる。平均的な客数が1スクリーンにつき9000人だったとすれば、映画館側からは完全に突っぱねられることになるし、平均が1スクリーン8000人だったとしても得られる超過利益(平均を超える利益)がなくなってしまうため上映館を増やすことには難色が示されるだろう。


製作にも携わるであろう配給会社としては、その後のDVDセールスなども見越せば興行収入に対する配給収入の割合を下げてでもスクリーン数を増やすという方向に動くのかもしれないし、そんなことはしないのかもしれない。