アニメDVDにレーティングが必要じゃないかという話


先日のエントリ:深夜アニメにもレイティングが必要なのでは? - Obra de Sobra よしなしごと
では、深く考えもせず乱暴な書き方をしてしまったため、深夜アニメのテレビ放送そのものにレーティングが必要という印象を与えるエントリとなってしまった。
基本的に、「DVDについてレーティングが必要だ」ということを伝えたかったので、整理して、少し視点を変えて新たにエントリとしてみた。

テレビアニメのDVD化における修正作業

毎週30分のアニメを制作することは時間的にかなり大変な作業のようで、かなりの作品で作画が乱れているなど100%の質を確保できないままテレビで放送されてしまう。
テレビ放送1回きりであればそれでも構わないのだが、DVD化し高価格で販売するためにその修正が行われるのが一般的となっている。


先日のエントリを書く契機となったアニメ『ご愁傷さま二ノ宮くん』のDVDでは、その修正作業を利用して、作品の質を確保することに加えて、地上波テレビでは放送できないくらい過激なもの(具体的にはよりエロくすること)とし、DVD購入のインセンティブを高めるという方策がとられている。*1


その方策が間違っているとは思わない。
むしろ、テレビ放送版に非常にわかりやすい付加価値をつけたことでDVD購入意欲を高めることができ、ビジネス上はプラスな面が大きいであろうと思う。
ご愁傷さま二ノ宮くん』DVD化の際の修正が市場で受け入れられる可能性は十分に高く、これから増えていくことも予想される。

地上波放送アニメ=DVD版アニメ=全年齢対象という図式

今までは、アニメのDVD化において作画の乱れなどについて質を確保するために修正作業が行われていたため、その内容は基本的にテレビ放送版と変わらなかった。
地上波テレビで放送する(できる)ということは、誰が見ても良い(レーティングでいえば全年齢対象)ことが前提だったためにアニメDVDに関してレーティングを考える必要もなかった。

刺激が更なる刺激を呼ぶ

性的な表現に限らないが、刺激のあるものは始めはそのこと自体が価値を生み出すが、慣れてしまう・当たり前になってしまうと、消費者の目を引くためには更なる刺激が必要となり、より過激な表現が用いられるようになる傾向にある。


2007年は内容が過激すぎるということで内容が差し替えられたり放送が中止されるといったニュースがいくつも話題となった。ネット上で見るそれらの事件に対する反応は、比較的好意的なものが多かったことも一つの例といえるだろう。


今までは、地上波テレビで放送できるかどうかという基準(曖昧ではあるが)があり、それが防波堤となって誰が見ても問題とはならない内容に抑えられていた。

DVD版アニメ=全年齢対象という図式の崩壊

しかしながら、今回の『ご愁傷さま二ノ宮くん』のケースでは、テレビ放送された内容に比べて意図して過激な表現への修正が行われており、修正後の内容では地上波放送できるレベルを超えていた(個人的には15歳以上推奨などのレーティングが必要なレベルだろうと感じた)。


重要なことは、テレビ放送では地上波放送の基準に則った内容で提供するものの、DVD化においては修正作業を行うことで地上波放送基準を超えた内容となっているということだ。
修正作業という、実質的に地上波放送基準を超えることが可能な方法を見つけ出したことで、今まで地上波放送基準ギリギリに抑えられていた表現が、これからはその基準を大きく超える競争となっていく可能性が十分にあると思う。

レーティングの必要性

DVD版の内容はレンタル店やネット配信、専門チャンネルなどで利用されることになり、その時点で地上波放送されていたのだから全年齢対象で構わないという判断が下されれば、実質的に年齢制限が必要であろうコンテンツが制限無しにアクセス可能となってしまう。
そういった状況になってしまったときに、社会からは過激な内容のアニメだけではなくアニメ自体が有害なものであるという認識を受け、一般向けに提供されているアニメに対しても大きな影響が出てしまう。


作品について詳しい知識を持たない人でも過激な内容を含むアニメなのかどうかを峻別できるようにするために、また、地上波放送基準が実質的に取り払われたアニメDVDに対して一定の制限を加える方法としてレーティングが必要となるのではなかろうか。