テレビドラマの収益チャネル(日本、アメリカ、韓国)

この前、韓国のテレビドラマを製作する人の講演を聴いた。
テレビドラマの番組流通について、日本より進んでるなと感じたので、日本、韓国プラスアメリカでどうなっているのかを簡単に調べて比較してみた。


日本のテレビドラマの利用効率の低さが目立つ。

日本

1. 地上波放送
2. ビデオソフト販売・レンタル
3. 地上波再放送


基本的に、地上波放送された後、DVDとして販売・レンタルされることになる。
その後、人気のあったものが再放送される。
また、作品よっては映画化されることもある。


地上波テレビ局がテレビで放送するために製作する。
このため、地上波での1回目の放送で全てが完結するように作られていた。
最近になって、DVD化等の動きが出てきたという程度で、二次利用による収益最大化が進んでいない。

アメリ

1. ネットワーク局(あるいはオフネットワーク局)でのファーストラン
2. 当日深夜CM付でインターネット配信
3. 翌日の正午から、CM抜き有料配信
4. ビデオソフト販売・レンタル
5. シンジケーション市場での販売(地上波独立局、CATV、CS放送


基本的に映画会社がテレビドラマを製作する。
地上波放送のネットワーク局において放送後、当日中にインターネットでCM付の無料配信、翌日以降有料配信が行われる。その後ビデオソフトとして販売・レンタルされるほか、ネットワークに属さない独立局やケーブルテレビ局、CS放送局などが参加するシンジケーション市場において販売される。
シンジケーション市場(=再放送市場)の規模が非常に大きいことが特徴。人気作品の場合、販売価格が高いのに加えて、何年にもわたって売れ続けることになる。
一方で、視聴率が低いと即座に打ち切られるといったシビアな面も強いようだ。


http://www.soumu.go.jp/joho_tsusin/pressrelease/japanese/housou/000718j702.html(第3章第1節1)

番組制作会社がネットワークから得る放送権料は番組制作費の60〜80%程度であり、それだけでは番組制作費を賄うことはできない。そこで、番組制作会社はシンジケーションを通じて番組を繰り返し販売することにより、番組制作費を回収するとともに、次の番組制作に投じる資金を確保しているのである。


http://business.nikkeibp.co.jp/article/tech/20061117/113926/

 例えばNBCの新ドラマ「Heroes」の放送は月曜夜9時。放送終了から数時間後の午前2時には、NBC.comでCM付きで公開されます(日本から見ることはできません)。さらに翌日の正午までには、アップルのiTunesストアで1ドル99セント(約240円)でCM抜きで販売されます(これも日本からは購入できません)。

韓国

1. 地上波放送
2. 当日or翌日にインターネット配信
3. 1日以後にCATVで放送
4. ビデオソフト販売・レンタル


地上波テレビ局により放送され、当日か翌日に有料でインターネット配信が開始される。
その後ケーブルテレビでも放送され、ビデオソフトにより販売・レンタルされる。

インターネットの利用が進んでおり、当日以後有料配信がなされる。
テレビ局が番組を製作する場合でも外部資本を入れなければならないと法律で定められているため、テレビドラマ製作でも外部製作会社が出資を行う。
日本での韓流ブームのおかげで、海外販売による収益が大きいらしい。

各国の印象

アメリカでは、テレビ局による放送コンテンツの製作が禁じられている。テレビドラマは、基本的に映画製作会社が製作し、その作品から得られる収益を最大化するために流通チャネルが選択されることになる。
その結果として、始めにネットワーク局で放送した後、ビデオソフトや再放送市場での販売、インターネット配信など収益が得られる場に積極的な展開が行われる。


一方、日本では、テレビ局が放送するためにテレビドラマを製作する。
テレビ局の広告収入を最大化するために番組製作がなされるため、その後の利用についてはあまり考えられていない。作品を他メディアで展開するとテレビの視聴率が下がるといった(テレビ局にとっての)悪影響が懸念されるために、他の流通チャネルでの展開も積極的には行われない。元々二次利用が考えられていないために過去作品については権利処理ができていないという面も上げられるが、ここ数年の作品を見てもインターネットやケーブルテレビでの展開は行われていない。
最近では、大型コンテンツの映画化という展開がなされている。映画は劇場(=お茶の間の外)における流通コンテンツであり、その後テレビ放送ができる。つまり、テレビとはバッティングせずマイナス面がないこともあって、積極的な展開がなされていると見ることもできる。アメリカではテレビドラマの映画化は例外的なことであり、日本独自の動向といえる。


韓国では、テレビ局と外部製作会社が共同でテレビドラマを製作するため、日本に比べ二次利用に積極的な姿勢が見られる。しかしながら、日本と同様に地上波テレビ局の力が非常に大きく再放送市場が小さいため、二次利用の場がインターネットでの有料配信などにとどまる。日本で韓国ドラマが一定の地位を得たために、海外販売による収益も大きな地位を占めつつあるように思う。

まとめ

アメリカでは、コンテンツの収益最大化という視点での展開が行われる。地上波テレビもケーブルテレビも、インターネットも、ビデオソフトもすべてが収益獲得メディアという意味で同列だ。
日本では、テレビ局が自局の視聴率を上げるためにテレビドラマの製作が行われる。優先順位はテレビ視聴率であり、他のメディアはテレビ局の広告収入に悪影響がない場合にのみ積極展開が可能となる。
韓国では、テレビ局がテレビ番組の著作権を持つことの弊害に気づき、外部からの出資を義務づけることで日本モデルとアメリカモデルの中間(あるいはアメリカモデル)へ舵をきっているようだ。