なぜ、アメリカではマニア向けアニメDVDが安いのか

なぜ、アメリカでのマニア向けアニメの価格は、日本の価格に比べて安いのかを考えてみた。
一つは、元々アメリカではDVDが売れる市場であり、それに応じて価格も低めに設定されていること。
もう一つは、マニア向けアニメを、マニアだけでなく一般の若者に対して販売しようとする戦略があるようだ。

DVD全般の価格帯の違い

元々、アメリカでは、DVD全般の価格が日本に比べて低く設定されている。
その理由を考えてみたのが先日のエントリだ。
アメリカのDVDがなぜ安いのかを考えてみる - Obra de Sobra よしなしごと


DVDのメインジャンルである映画はアメリカでは20ドル程度だ。(以下、価格は全部定価ベースで記述)それに対して、日本では低価格戦略でいくハリウッド映画で3,000円、邦画メジャーのもので4000円、その他のものは5000円と倍近い価格となる。


日本におけるアニメDVDの価格を、映画DVDの価格と比べてみる。
日本でのアニメの価格が30分2,000円から3,000円なので、2時間だと8,000円から12,000円と、邦画の2倍から3倍の価格となる。
アメリカでマニア向けアニメの価格を日本と同じように設定する(映画DVDの2倍程度)と、2時間40ドルから60ドルという計算になる。


この時点で、日本に比べて半額近い価格設定となる。

マニア向けアニメのマスに向けた商品展開

しかしながら、アメリカではアニメDVDは4話30ドル程度と、さらに低めの価格設定となっている。


これは、アメリカではマニア向けDVDの販売ターゲットを限られたアニメオタクだけではなく、一般に向けて販売しようという意図によるものだろう。
以下のジェトロのレポートでも、大手流通量販店でマニア向けアニメDVDが販売されてる(いた?)という記述があり、マニア向けの限られた流通ルートではなく、大衆向けの流通ルートにのせた販売が行われていることがわかる。


米国アニメ市場の実態と展望(輸出促進調査シリーズ)2006年3月 | 調査レポート - 国・地域別に見る - ジェトロ

米国における日本製アニメのホームビデオビジネスは今曲がり角に差し掛かっている。
2005年5月、米国の大手流通量販店ターゲットが一部のヒット作品を除いて段階的に日本製アニメDVDの販売を打ち切るというニュースが流れた。前年1月、全米700の店舗に日本製アニメやマンガの専門コーナーを設置し、積極的な展開を始めてから僅か1年4ヶ月目のことである。
日本製アニメの英語版DVDは1枚30?前後で、米国のDVD平均小売価格に比べて高単価であるが、主な購買層である日本製アニメのマニアが高クオリティの映像と音声、特に日英両方の言語でアニメを楽しめる事からDVDを好んだ結果、日本製アニメDVDの年間販売枚数は2000年の210万枚から2003年には1290万枚と4年で6.14倍に急増した。しかしその後安定傾向に入り2004年は1210万枚、2005年は1206万枚とほぼ横ばいで推移している。 (注)Nielsen Video Scanデータを基にWowmax Mediaが推定

一方、1年間に発売される新作タイトル数も2000年には174タイトルだったものが2004年には752タイトルと飛躍的に増え、2005年は840タイトルが新しく発売された。

このビデオスキャンにリストアップされている日本製アニメDVDのタイトル数は2005年末時点で4080タイトル。これが米国内で発売中の総タイトル数であると考えられる。
このうち、2005年の1年間の販売量が10万枚を超えたのは10タイトル、5万枚から10万枚が20タイトル、1万枚から5万枚が284タイトルであった。ディズニーから発売した宮崎アニメのなど一部のタイトルは好調ながら、多くのタイトルが1万枚以下の販売枚数に留まっている現状が見える。


しかしながら、上記引用にもあるように、日本のアニメDVDの販売数は1200万枚ほどで頭打ちとなり、当初のような大衆へ向けた販売がうまくいかなかったことを示唆している。


現状では、DVDを1枚30ドル程度で販売した後に、シリーズ販売後1年ほどたってから全てまとめたDVD-BOXを100ドル以下で販売することで、実質的にはさらなる値下げを行い低価格による売上増を目指しているようだ。(日本の場合はBOX化までに3年から5年ほどの期間があり、必ずDVD-BOXが出るとも限らない)
ULTIMO SPALPEEN

ともあれ、これまでの北米でのアニメDVDビジネスには、20〜30ドルの単巻DVDを販売した後、少なくとも1年は期間を置いてから、50〜60ドルの廉価版BOXセットを出す、というひとつのパターンがあったわけですが(会社によっても異なります)、


バンダイビジュアルUSAでは、量販店で多く売るという方法をやめて、パッケージなどの品質も高いDVDを高価格でコアなアニメファンに向けて販売するという方向転換を行っているようだ。