一瀬隆重氏の講演

『リング』『呪怨』などを手がけた映画プロデューサ一瀬氏の講演を聞いてきた。
覚えている範囲で、印象に残ったことを。

プロデューサの仕事。

プロデューサという名でされる仕事は様々で、人によって異なるとのこと。
極端な例を言えば、たまたま出資企業の担当者だったというだけでプロデューサとして名前が載ることもあるんだとか。


一瀬氏が携わるプロデューサとしての仕事は以下の通り。

  1. 企画・開発(企画から脚本・監督の決定等)
  2. 資金調達(製作委員会の組織)
  3. キャスト・スタッフの決定
  4. 撮影(現場の様子を見るだけで、撮影自体は監督におまかせ)
  5. 編集(プロデューサが最終的な編集権を持ち、監督とディスカッションするとのこと)
  6. 配給・宣伝(配給は製作委員会の組織時に決まる?)

配給会社の宣伝力が弱い。

製作委員会にテレビ局・ラジオ局・出版社等のメディアが入ることで、映画の広告は出資したところがやってくれる。そのため、配給会社自身の宣伝力がそれほど強くないのだとか。製作委員会の弊害とも言える現象。


いつだったか、『ダ・ヴィンチ・コード』の宣伝にうん十億使って最終的に興行収入100億円を達成という話を聞いたことがあるので、国内系ではなく外資系の配給会社は少し違うのかもしれないと思ったりもした。

俳優の層が薄い

ハリウッドなんかに比べるとずいぶん層が薄い。
日本ではテレビドラマをメインに俳優が育ち、トップの俳優はCMで稼ぐという構図になっているため、品行方正な人しか生き残れないからとか。CM契約で1年数千万×数本に対し、ドラマ・映画はせいぜい1本1000万程度。テレビドラマで知名度をあげ、CM契約で稼ぐというのがサクセスストーリー。そして、CMに出るためには、イメージが良くないといけない。
俳優として優秀な人には、そうでない人も多いけれど、そこが削られてしまっている。

スタッフが貧乏

映画のスタジオが崩壊して、スタッフ(監督含め)の収入が減ったまま、最近になっても水準が上がっていない。
大作映画の予算が高くなってはいるが、本来30億で作るべきものを10億で制作するといった感じで、仕事に対する単価が上がっているわけではないとのこと。
テレビ局などの金儲けに、映画の制作スタッフが利用されているだけという状況なのだそうな。


日本でトップの映画監督の収入がおそらく月120万円程度。1年間ずっと働いたとしても1440万円でしかない。ハリウッドでは、一発あてた次のオファーは軽く1億円を超えるとか。
俳優なども同様のことが言える。
お金がすべてではないが、そういうモチベーションがないとなかなか人も集まらないし、層も厚くなっていかない。

打率10割のプロデューサではダメだ

一瀬氏は、打率(リクープ率と思う)6割ほどとのこと。


10割を狙おうとすると、保守的なものしか作れなくなる。
テレビドラマの映画化とか、超有名原作モノとか、パート2,3,4とか。
そんなことばかりしていると、最終的に映画館に足を運ぶお客さんがいなくなってしまう。
3本あたったら、1本は冒険していかないといけない。

日本発の海外向け映画を

日本は、国内市場が世界2位と大きいため、国内だけで商売ができる。
逆に言えば、そのために、国内だけに目を向けた作品ばかり作ってきた。
香港や韓国では、自国の市場が小さいため、始めから海外向けという視点を入れた映画が制作されている。日本も、世界に通用するコンテンツ力はあるので、海外向けという視点をもった映画を作ってもいいのではないか?


韓国が最近45億円をかけた映画(北米向けに英語で作った)を制作した。大コケしたみたいだけど、それでも日本では試みすらされていないことをやっている。


日本でも、同じことができるはず。
特に3D技術はテレビゲームで最先端を行っているわけで、ハリウッドよりは低予算でトランスフォーマーくらいの映画は作れるはず。
そういった試みが必要。