子供のアニメ離れと嗜好性の高すぎるアニメ

当分は成長するはずのアニメ産業

テレビアニメという事業が大きく伸び出したのはここ30年ほどだ。
現在、DVDを買うほどにアニメが好きな人の一番上の世代が40代くらいだろう。基本的に映像コンテンツは見るだけなので年齢が上がったとしても消費することに困難が生じることはない。そのため、30代40代になってアニメDVDを買うアニメファンは、おそらく50代60代になってもアニメを消費し続けるだろう。


100年の歴史がある映画とは違い、アニメ好きな人の最高齢が未だ40代ということは、時が経つにつれ新たに20代になったアニメファンがDVDを購入し始めることで市場規模は大きくなっていく。
少子化により若年層の人口が少ないため、成長が鈍化するかもしれないが安定して市場が成長していくのはほぼ間違いがないといえるだろう。


しかしながら、それは新たなアニメファンが過去と同様に生まれ続けることが条件となる。
今の子供がアニメを見ない、消費しないということになれば、今現在のアニメファンが消費を終えるまでの期間限定の産業となってしまう。

アニメを見る機会の減少

少子化の影響もあり、プライムタイムにアニメを放送しても視聴率が10%に届かなくなった結果、現在午後7時から10時の間に放送されるアニメはほとんどなくなってしまった。
その結果、土曜日曜の午前中に小学生までを対象とした子供向けのアニメが集中し、そして20代以上のDVD購入者向けのアニメが深夜に多数放送されている。


ここには、10代向けのアニメが存在しない。
深夜に放送されているアニメは中学生高校生が見てもおもしろいと感じるものも多くあるだろうが、いかんせん深夜1時2時では見ていられる時間ではない。
通常テレビを見ている時間(せいぜい深夜1時くらいまでだろうか?)にバラエティに飽きたからアニメを見よう、といった選択肢からははずれてしまいアニメファンの獲得プロセスにはなり得ない。


さらに、現状のDVD販売を中心としたアニメビジネスにおいて、テレビでの放送はDVD購入のための宣伝の役割を果たしているが、DVD購入をするようなアニメファンに遡及できれば良いため費用のかかるテレビ放送である必要はない。代替メディアとしてインターネットによる配信が期待されており今後インターネット配信が主流になる可能性も大きい。
インターネット配信は、オンデマンドで見たいときに見られるために、一旦好きになった人にとっては積極的により多くのアニメを見ることができるようになる。その反面、アニメが深夜放送からなくなると、テレビを中心として映像コンテンツを消費する一般人の選択肢からアニメがはずれてしまい、新たなファン獲得ができないという結果をもたらす。
中は広いけれど、間口が狭いという状態になってしまう。

アニメの内容的な変化

DVD販売を主としたアニメを作ろうとすると、どうしても購買力を持つ20代以上を対象とした作品となりがちだ。
その結果、ここ10年ほどでマニア向けの作品が非常に増えている。
DVDを購入するほどのアニメファンの数はアニメを好きで見ている人の数に比べて非常に少なく、その嗜好も偏っている。しかし、そのDVD購入者をターゲットにアニメを製作しなければならないため、年に100や200の作品が製作されるにもかかわらず、そのほとんどが「萌えアニメ」や「ロボットもの」となり、多様性が失われつつある。


新たな潮流は傍流から生まれるが、その傍流が存在し得ない状態になると、大きな変化が起きたときに一気に産業が転覆しかねない。

課題

現在は、個々の作品が利益を上げるための行動が多様性を失わせ、新たなアニメファン獲得の道を狭める結果となっている。この10年ほどは、それにも関わらずコアなアニメファンが1人当たりの消費額を増やしていったために市場全体の成長につながっていたが、それも所得の限界に達してしまい成長が鈍化している。
この先も成長を続けようとすれば、また、持続的な産業となるためには少数のファンの1人当たりの消費額を増やす方法の他に、広く浅く多くの人から収益を上げるようなシステム作りが必要となろう。


一般的な映像コンテンツの消費の場が6チャンネル程度の地上波テレビ局を中心である限りは、アニメファン獲得のためにテレビ放送がどうしても必要となる。そして、テレビ放送という形で無料で映像コンテンツを提供する以上、スポンサーからの広告収入を得るか他の方法で収益を獲得するしかなく、DVD販売やグッズ販売に頼らざるを得ない。しかし、少数だが声の大きな(=多くのお金を払う)客だけに目を向けていては、多様性が失われ、多くのお金は払えないが少額なら支払っても良いと考えている多数の潜在的な顧客から愛想を尽かされてしまいかねない。
一つの試みとして、路上パフォーマンスのような見ておもしろかったら自分が決めた金額だけ支払うという方法がとれないかと考えたりするのだけれど、ネット上の少額決済が困難なことや消費者の心理が読めないことから実現は難しそうだ。

参考リンク

http://www.47news.jp/CN/200704/CN2007041101000147.html
テレビ東京のアニメが子供にとってのファーストチョイスでないという声。


http://www.watch.impress.co.jp/av/docs/20070702/aniken.htm
中ほどに、会場での質問と岡田斗司夫氏の言葉。
エヴァンゲリオンでさえ、誰もが見る世代共通のアニメではない。


http://homepage3.nifty.com/mana/new-eva-siryou1.html
エヴァンゲリオンのプロデューサー大月氏の言葉。
オタク向けのアニメを作り続けた結果、中高生に見向きもされなくなってしまった。