映画『大日本人』の実績と評判

興行成績

全国221スクリーンで公開。
オープニングの土日で興収2億3000万円。よほどの失速をしない限りは最終的に15億円ほどになりそう。

http://eigakan.blog6.fc2.com/blog-entry-1130.htmlより

松竹「大日本人」6/2-(東劇、なんばパークスシネマは6/1-)全国221スクリーン、2日間動員15万9281〜興収2億2944万2700円。「タイヨウのうた」(10.5億円)対比175%。


「大日本人」 戦略の勝利?: 映画コンサルタント日記より

日本では一切試写をせずカンヌ国際映画祭・監督週間部門でのワールドプレミアを経て、いよいよ公開になりました「大日本人」、オープニング土日興収2.3億円。比較作品が難しいですが、話題先行型(?)で「電車男」(最終興収37億円)対比82%。今年松竹配給で公開された作品としては、実写邦画最多スクリーンで公開された「蒼き狼」やオダギリジョー主演の「東京タワー」を上回るスタート。
普段取材を受けず、自分の番組以外のゲスト出演もほとんどない松本人志監督。今回は映画宣伝のため約175媒体に応じたそうで、確かに週末「笑っていいとも」「さんまのまんま」「SmaSTATION!!」等よく見ました。

評判

超映画批評『大日本人』20点(100点満点中)

正直なところ、ここで松本監督が狙ったものはわからぬでもないのだが、こういうやり方では絶対にダメなのである。なぜダメなのかという理由も、はっきりと指摘することができる。それは、端的にいうとメタミステリ的な仕掛けと世界観のぶち壊しを同時にやってしまったということ。そこが、本作が大失敗した最大の原因だ。

二つのどちらかに絞っていれば、この切り返しはそれなりに演出効果をあげ、私としても高く評価したいところであった。だが、松本監督は欲張りすぎた。その結果、そこまでせっかく作品の中で築いてきたものにケリをつけられず、単に収拾がつかなくなって安直な方向に逃げただけ、という風に誤解される失敗作となってしまったのだ。きっと多くの人々にとってこの映画は、途中まで積み上げた積み木を自ら壊す幼児の遊びにしか見えないことだろう。


「大日本人」こんな映画、なぜカンヌへ? : J-CASTテレビウォッチ

先行ロードショウの朝、築地東劇11時30分の第一回上映を見た。入りは3/4くらいで週日の午前としては上出来。多分松本人志ファンだろう若い人たちが多い。筆者は、松本が嫌いだから映画を期待しないが、ファンたちは映画のギャグで笑うだろうと耳を澄ます。だが少しだけクスリとはするが、誰も大笑いもしなければ拍手も無い。終わるとシラケタ顔で下を向いて出て行く。


上のリンク先では、映画の内容は個人的な好みに合致するものであるとしながらも、監督が素人同然であり、良い映画になるための質的な条件を満たしていないということが述べられている。
次のリンク先では、松本監督自身が嫌いということもあり多分に主観の入った内容ではあるが、映画館での観客の笑いが少ないことなどが指摘されている(これも割り引いて見る必要はあるが)。
他の、一般のblogなどの言及を見ても、手放しでおもしろかったという感想は少なめだった。「よくわからなかった」「人を選びそう」「どこで笑うべきかわかりづらい」などが多いようだ。

この映画の功罪

テレビの顔の1人ともいえるお笑い芸人の松本人志が監督したということでもともと注目度が高く、松本監督自身が普段は受けない取材を受けるなどのプロモーションの甲斐もあって、興行成績としては十分以上のものだろう。そして、おそらくこの映画を見に行った人の多くはあまり映画館へ足を運ばない人なのではなかろうか。
普段映画を見ない(テレビでは見てるのかも知れないが)人を映画館に誘導するという、非常に大きな役割を果たしている。


日本では、1人が1年に映画館で映画を見る回数の平均は2回未満である。その中身は、5回10回見に行くという「映画好き」な人が数百万人で、4割くらいは一度も見に行かないということで、映画は嗜好性の高いものとなっている。
スクリーン数の増加に比べて興行収入が伸び悩む映画業界にとっては、「映画好き」な人が映画館へ行く回数をさらに1回増やすことと、普段映画館で映画を見ないひと(年に1回とかの人も含む)に来てもらうことが必要だ。


後者の意味で、この『大日本人』という映画は大きな役割を果たしたと言える。


しかし、その誘導は、映画の内容次第では逆効果になることがある。
何事についても同じことが言えるが、映画館で映画を見る経験がほとんどない人は、たまたま見に行った映画の評価をそのまま映画全体に対する評価と同一視することになる。そのため、はじめに質の低い映画に当たってしまうと、映画自体について、お金を払ってまで見るものじゃない、映画館で見る意味がないといった評価が与えられてしまう。その結果、その人は当分映画館へ足を運ばないことになる。


批評や評判を見ていると、『大日本人』という映画は、良作と言われるために必要な映画の質的な条件を満たしていない可能性があり、逆効果のパターンに当てはまってしまう。
とりあえず、そうでないことを祈っておきたい。