『開示情報からわかるコンテンツ企業のビジネスモデル分析』

『開示情報からわかるコンテンツ企業のビジネスモデル分析』 監査法人トーマツTMTインダストリーグループ

コンテンツ企業のビジネスモデル分析―開示情報からわかる

コンテンツ企業のビジネスモデル分析―開示情報からわかる


コンテンツ関連企業について、各業種のビジネスモデルと、公開されている有価証券報告書からわかる傾向を書いた本。
コンテンツ制作会社(映画、ゲーム、アニメ、音楽)、コンテンツ配信事業者、Eコマース事業者、インターネット広告事業者、通信インフラ事業者についての分析がなされている。


それぞれについて、
1. キャッシュ・フローと投資回収の仕組み(=ビジネスモデル)
2. B/S分析
3. P/L分析
4. 資金調達分析
5. 事業のリスク分析
6. 対処すべき課題の分析
7. 会計上の論点
と分けられている。


最後にオマケとして(?)楽天・インデックス・フォーサイドドットコムの買収戦略(成長戦略)について書かれている。

自分で有価証券報告書を読む力があれば、ちょっと見たらわかることではあるのかもしれない。
ただ、こうやって見ると良いという視点や、複数の企業を通してみることで見えてくる傾向をわかりやすく示してくれていて、とても訳にたった。
また、複数業界を同じように分析することで、基本的に注目すべき点というのもわかりやすく教えてくれる。


以下、なるほどと思った内容。

映画会社は半分不動産会社

映画会社は固定資産比率が高く、損益面に関しても不動産賃貸収入による安定化が図られている。土地も何十年も前に取得したものであり、含み益が相当な額となっている。
最近でも、映画館の土地売却で数十億円の利益というニュースがあったり、新宿歌舞伎町の映画館なんかはオフバランスだった借地権の評価の結果、TOBでの買い取り価格が時価の数倍になったなんてのもあった。

インフラ事業者は固定資産比率高い

また、インフラ事業者(通信事業者)も基本的に固定資産比率が高く、固定負債比率も高い。
なお、通信事業者の大手であるNTTとKDDIソフトバンクは、それぞれ財務諸表の表示について準拠する法律・基準が異なっており、相違点を把握していないと比較が難しいという点がある。ISPについては、接続サービスの提供だけで物理的なものが必要ないため固定資産比率が低いようだ。

コンテンツ製作の会計処理の比較可能性

製作コンテンツの会計処理。映画会社では製作コンテンツを制作中は仕掛品、完成後は製品として棚卸資産に計上している。

アニメ・ゲーム制作会社では、製作コンテンツを棚卸資産に計上するのか、ソフトウェアとして資産計上するかは各社によってまちまちのようである。費用化(償却)方法についても統一されてはいない。最近も、償却期間を短縮するなど見積の変更が行われていたりする。

音楽会社は、原盤権を棚卸資産に計上。売上に応じて費用化されるが、最近はCDリリースと同時に全額費用化されるようだ。

Eコマース事業の分類

Eコマース事業には、市場の提供(オークション市場の提供も含む)と、事業者自身が商品を仕入れて販売する方法の二つが含まれている。

市場を提供する企業は、販売or出店に関する手数料収入とサイトにおける広告収入が主な収益となる。

代金の回収方法(決済方法)により売上債権に関するリスクの程度が違ったりする。(前払ならリスクゼロだし、振込などの後払いならばリスクは高くなる)

事業上のリスク

事業上のリスクとして、人材確保に関するリスクを表示しているところが多い。
ほとんどが中小企業であり、また人的資源の重要性が高いためと考えられる。

インターネット関連の企業では個人情報を取り扱うことに関するリスク、コンテンツ製作・配信企業では特定のコンテンツに対する依存やコンテンツの成功・不成功により経営成績がおおきく変動するリスクなどが共通して表示されている。

目次

目次
第1章 コンテンツ企業のビジネスモデル
第2章 コンテンツ企業とディスクロージャー
第3章 コンテンツ制作事業者のビジネスモデル分析
第4章 コンテンツ配信(供給)事業者のビジネスモデル分析
第5章 Eコマース事業者のビジネスモデル分析
第6章 インターネット広告事業者のビジネスモデル分析
第7章 通信インフラ業界のビジネスモデル分析
第8章 楽天、インデックス、フォーサイド・ドット・コムの買収戦略分析
第9章 コンテンツ企業をめぐる制度改正と今後の課題