在京テレビ局2008年度第1Qの経営成績比較

スポット収入が二桁減で、相当ヤバイと言われているテレビ業界。
2008年第1四半期の決算短信で、在京テレビ局5社を比較してみた。

放送事業の比較

放送事業は、主にタイム収入、スポット収入、その他(番組販売等)から成る。
タイム収入とは、番組の提供スポンサー(テレビで毎回クレジットが出る企業)が番組制作費を出して番組内にCMを出稿するためのもの。
スポット収入とは、主に番組と番組の間の時間に対するCM出稿のためのもの。


イメージとしては、タイム収入がそのまま番組制作費(=売上原価)となり、スポット収入が販管費+利益となる。


2009年4月期の放送事業の売上及び営業成績

      テレビ朝日 テレビ東京 フジテレビ TBS 日本テレビ
タイム収入   (百万円) 22,940 13,371 38,302 31,109 32,455
    前年同期比 1.5% -7.6% -0.2% 2.1% -0.5%
スポット収入   (百万円) 24,466 6,548 32,400 23,627 26,225
    前年同期比 -10.6% -10.5% -12.6% -15.2% -9.0%
その他 番組販売収入 (百万円) 3,155 1,146 - - 2,600
    前年同期比 2.2% -1.2% - - 3.7%
  その他 (百万円) 4,736 443 23,003 2,934 8,092
    前年同期比 30.1% -13.2% -17.0% 1.7% 0.3%
売上合計   (百万円) 55,297 21,508 93,698 61,966 63,717
    前年同期比 -3.8% -9.8% -9.2% -0.9% -4.3%
営業利益   (百万円) 2,096 167 8,572 1,986 4,897
    前年同期比 -47.1% -81.1% -28.0% -73.2% -45.6%
スポット収入減少額(=A)   (百万円) 2,901 768 4,669 4,235 2,594
営業利益減少額(=B)   (百万円) 1,866 717 3,334 5,426 4,107
B/A     64.3% 93.3% 71.4% 128.1% 158.3%


スポット収入については、平均10%を超える減少となっている。
営業利益に至っては、一番減少幅の少ないところでも28%減。テレビ東京・TBSに至っては8割・7割減だ。


上で、スポット収入が販管費+利益となるイメージだと書いたが、営業利益の減少幅と、スポット収入の減少幅を比べてみると、6掛け以上の比率となっており大きく間違っていないように思われる。
ニュースなので広告費用の話題が出た場合には、スポット収入の減少額が、×60%以上の比率で放送事業の営業利益に影響するということを頭に入れながら見ると良さそうだ。

各局のセグメント別売上・営業利益

テレビ朝日
    放送事業 音楽出版事業 その他事業
売上高 (1)外部顧客に対する売上高 54,509 3,530 6,212 64,252
  (2)セグメント間の内部売上高・振替高 789 49 1,415 2,255
  55,299 3,580 7,628 66,507
営業利益   2,096 876 1,022 3,995
  営業利益シェア 52.5% 21.9% 25.6%  
前年同期営業利益   3,962 134 353 4,449
  営業利益シェア 89.1% 3.0% 7.9%  
営業利益の前年同期比   -47.1% 552.4% 189.7%  

音楽出版事業は、ケツメイシHYのライブによる増加。
その他事業では、映画『相棒』好調による。

テレビ東京
    放送事業 ライツ事業 計(百万円)
売上高 (1)外部顧客に対する売上高 24,693 5,098 29,791
  (2)セグメント間の内部売上高・振替高 386 80 466
  25,080 5,178 30,258
営業利益   167 295 463
  営業利益シェア 36.1% 63.7% 0.0%
前年同期営業利益   887 577 1,465
  営業利益シェア 60.5% 39.4% 0.0%
営業利益の前年同期比   -81.1% -48.9% 0.0%

ライツ事業は主力がアニメ(セグメント売上の90%くらい)。アニメ先行投資によりライツ事業の利益減少。

フジテレビ
    放送事業 放送関連事業 信販売事業 映像音楽 その他
売上高 (1)外部顧客に対する売上高 88,312 4,895 15,553 17,014 15,993 141,769
  (2)セグメント間の内部売上高・振替高 5,386 7,124 52 484 3,935 16,982
  93,698 12,020 15,605 17,499 19,929 158,752
営業利益   8,572 691 337 374 -230 9,746
  営業利益シェア 88.0% 7.1% 3.5% 3.8% -2.4%  
前年同期営業利益   11,898 600 -522 78 -107 11,947
  営業利益シェア 99.6% 5.0% -4.4% 0.7% -0.9%  
  前年同期比 -28.0% 15.2% - 379.5% 115.0%  

映像音楽事業の利益増は、音楽でaiko,羞恥心、DVDでドラゴンボール医龍IIが好調なため。

TBS
    放送事業 映像・文化事業 不動産事業 その他事業
売上高 (1)外部顧客に対する売上高 61,418 13,239 3,953 18 78,630
  (2)セグメント間の内部売上高・振替高 547 1,386 1,236 373 3,544
  61,966 14,626 5,189 392 82,175
営業利益   1,986 735 1,886 22 4,632
  営業利益シェア 42.9% 15.9% 40.7%    
前年同期営業利益   7,412 1,340 175 14 8,943
  営業利益シェア 82.9% 15.0% 2.0%    
営業利益の前年同期比   -73.2% -45.1% 977.7%   -


不動産事業で、赤坂サカスが完成・安定収益源化。

日本テレビ
    放送事業 文化事業 その他事業
売上高 (1)外部顧客に対する売上高 63,484 14,417 2,349 80,252
  (2)セグメント間の内部売上高・振替高 232 418 1,659 2,310
  63,717 14,835 4,009 82,562
営業利益   4,897 981 450 6,329
  営業利益シェア 77.4% 15.5% 7.1%  
前年同期営業利益   9,004 1,286 462 10,754
  営業利益シェア 83.7% 12.0% 4.3%  
営業利益の前年同期比   -45.6% -23.7% -2.6%  


文化事業の営業利益マイナスは、子会社(株)バップの悪化、通信販売の伸び悩み。

全体をながめて

営業利益シェアを見ると、主力事業であるはずの放送事業の利益シェアが一気に減少している。
各局とも、このところずっと、放送事業以外の収益源の確保が課題となっていたわけだが。
今年のスポット収入大幅減により、その真価が問われる時期に入ってきたのかも知れない。


テレビ朝日は、この四半期では放送事業と同じくらいの営業利益を、他の事業で計上している。
ただし、音楽事業ではビッグアーティストのライブがあったという特別な事情だったりと、安定しているとは言い難い。


テレビ東京は、ライツ事業(主力がアニメ)が営業利益の6割となっている。前年同期でも4割ほどあり、アニメ事業が放送事業以外の十分な収益源となっていることがわかる。


フジテレビは、今期でも放送事業の営業利益が88%を占めるなど、完全に放送事業中心型。
放送事業以外の収益をうまく得られていないということが言えよう。
一時期、東宝と組んだ大型映画が大当たりしていたが、最近は期待ほどにはいかないようだ。
ただし、放送事業の利益率が他社に比べて圧倒的に高いという理由もある。


TBSは、今四半期、赤坂サカスの収益が上がり始めた不動産事業が、放送事業とほぼ同額の利益を達成している。
安定収入となっているため、経営基盤が大きく安定したと言えるだろう。


日本テレビも、フジテレビと同じく80%前後が放送事業による利益であり放送事業中心型。
ただ、他の事業による営業利益額は、他社と比べて大幅に劣るというわけではない。


TBSの不動産事業、テレビ東京のアニメ事業が比較的安定した放送外事業となっているように思う。
残り3社は、映像、音楽、イベントなど、テレビで紹介→収益拡大という効果が得られる事業全体で、ある程度の利益を確保していくという方向性だろうか。

営業外・特別損益について雑感

営業外収益が結構大きい。
主に受取配当金、持分法投資損益など、関連会社による利益が中心。
フジテレビの30億円、TBSが20億円。日テレ、テレビ朝日が10億円前後となっている。(テレビ東京はごくわずか)


他は、特に目立ったものはなく。
テレビ東京の為替差損(営業外費用)が比較的大きいマイナスとなっていた他、株式市場の低迷による(と思われる)投資有価証券の評価減などがあった。