コンテンツビジネスにおけるウィンドウ順の変化
ここ数年のコンテンツビジネスでは、インターネットでの配信というウィンドウができたことで、逆転とまでは行かなくとも従来とは異なるウィンドウ戦略へと移行しつつある。
映画の場合
- 劇場公開→レンタル・セルDVD→テレビ
というのが基本形であった。
最近、アメリカなどでは、ネット配信が加わっている。有料ネット配信は、テレビでの無料での放送に先駆けて、DVD発売とほぼ同時に行われているようだ。
- 劇場公開→DVD≒ネット配信→テレビ
となるのが一般的だろうか。
いくつかウィンドウの逆転を試みもある。
日本でも、劇場公開と同時にネット配信をするという試みがなされていた。
解説:劇場公開とネット配信の相乗効果で映画作品の価値向上模索するブロードメディア | 日経 xTECH(クロステック)
映画の劇場公開、ネット配信、DVD販売を同時に行なう「Movie Hustle」*1など。
たしか、金額もストリーミングなのにほぼ同額ということで、おそらくあまりうまくはいかなかっただろうと思われる。
私が知っているのはアニメ限定だが。
テレビ放送→DVD化→映画館
というストーリーもある。プロダクションI.Gが制作した『攻殻機動隊SSS』が、ペイパービューでのテレビ放送→DVD→映画館という方向だった。
ただし、映画はイベント的な要素がかなり強く、あくまで例外的なものとも言えよう。
音楽の場合
- テレビ・CMタイアップ→ラジオ→CDシングル→CDアルバム
というのが一般的な流れだった。
それがネット配信の登場によって
- テレビ・CMタイアップ→ラジオ→CDシングル→ネット配信→CDアルバム
といった順になった。
最近、日本ではネット配信の売上(ほとんどが携帯電話向け)がCDシングルの売上げを上回りはじめ、実質的なヒットチャートはCDではなく着うたランキングとも言える様相を呈しつつある。
その売上規模・利益率の魅力から、CDシングルに先行してネット(というか携帯)配信が行われることも多くなってきた。
- テレビ・CMタイアップ→ラジオ→ネット配信→CDシングル→CDアルバム
アニメの場合
- テレビ→DVD
というのが一般的な流れで、これが覆ることはあまりないだろう。
最近は、少子化の影響で視聴率がとれないこともあり全国ネットのアニメ番組がとみに減少してきている。
また、深夜帯のDVD販売をメインとしたアニメ番組についても全国ネットワークの電波料・広告出稿量が負担となり独立局で都市部のみの放送という形態が多い。
それを補うかたちで、ネット配信が行われるようになった。テレビ放送の終了後2週間くらいしてからテレビの後追いでネット配信が行われている。
- テレビ→ネット配信→DVD
という流れだ。
また、ネット配信のみでテレビ放送を行わないという方法も試みられたが、十分な注目を集めることができず、なかなか成功していないようだ。
最近では、テレビとネット配信を同時に行うという方向性へと変化しつつある。
- テレビ≒ネット配信→DVD
また、アメリカでは規制が厳しいことなどもあって子供向けアニメ以外は、テレビ放送をすることなしにDVDを販売するということが基本だった。
そこにネット配信という選択肢が加わったことで、新作アニメの封切りをテレビでもDVD販売でもなく、ネット配信で行い、その後DVD販売を行うという方法が試みられている。
ネット配信を第1ウィンドウとしたビジネスが成功するとすれば、アニメがはじめだろうと思うのだけれど。そうなると、ネット配信→テレビという逆転現象もあり得るんじゃないかと思ったりする。