メディアのコンテンツ調達費(ニコニコ動画はどれくらい払うべき?)
ニコニコ動画をコンテンツを消費者に提供するメディアだと考えると、収入を得るためにコンテンツを調達するということになる。
ユーザが自発的にコンテンツをアップロードするため、コンテンツの調達費など必要ないという意見もあるかもしれない。ただ、現状を見る限り大半が違法なコンテンツと、その二次加工コンテンツが大多数なため、大元のコンテンツを製作した著作者からの仕入を行うという形式にするのが良策だろう。
コンテンツを消費者に提供するビジネスを行っている業種が、コンテンツをどの程度の費用をかけて調達しているのかを元に、ニコニコ動画がコンテンツ調達に出すべきor出さざるを得ない金額を考えてみる。
テレビ局のコンテンツ調達費
テレビ局は、基本的にコンテンツを自社で製作し、広告収入を得ている。
売上高に対して、番組制作費の割合をコンテンツ調達費の比率と考える。
http://business.nikkeibp.co.jp/free/tvwars/interview/20060210005332.shtml
テレビ東京は業界では長年、“番外地”なわけね。視聴率でそうだったし、番組を安上がりに作ってきた。
うちの年間制作費は400億円強で、一方、日テレ(日本テレビ放送網)、TBS、フジ(フジテレビジョン)は1000億〜1100億円くらいある。
との記述があるため、テレビ東京を400億円、それ以外の東京キー局の年間制作費を1,050億円とする。
売上高はそれぞれの有価証券報告書(個別財務諸表)から。なお、金額の単位はすべて百万円。
テレビ東京 | フジテレビ | TBS | 日テレ | テレビ朝日 | |
売上高 | 111,200 | 377,875 | 277,400 | 287,829 | 233,782 |
売上原価 | 40,000 | 105,000 | 105,000 | 105,000 | 105,000 |
売上高原価率 | 36.0% | 27.8% | 37.9% | 36.5% | 44.9% |
だいぶ差があるが、35%くらいと考えて良いだろうか。
なお、売上原価をコンテンツ調達費とみなすとだいぶ数字が変わる。
テレビ東京 | フジテレビ | TBS | 日テレ | テレビ朝日 | |
売上高 | 111,200 | 377,875 | 277,400 | 287,829 | 233,782 |
売上原価 | 77,886 | 245,975 | 194,770 | 199,052 | 155,759 |
売上高原価率 | 70.0% | 65.1% | 70.2% | 69.2% | 66.6% |
70%弱といったところか。
東京キー局の売上高には、全国ネットでの放送を前提とした広告収入が多く、売上原価の中に全国ネット放送をするため地方局から放送枠を購入する金額が含まれているため、コンテンツ調達費(=番組制作費)と純粋な広告収入の関係になっていない。このため、売上高も売上原価も、売上原価率も望む数字とはなっていないと思われる。
そのようなしがらみのない、大阪・名古屋のテレビ局の売上高・売上原価は以下のようになっていた。
テレビ大阪 | ABC | MBS | テレビ愛知 | 東海テレビ | CBC | |
売上高 | 14,493 | 74,192 | 69,513 | 11,189 | 36,723 | 35,815 |
売上原価 | 8,027 | 45,362 | 38,910 | 6,597 | 19,189 | 18,208 |
売上高原価率 | 55.4% | 61.1% | 56.0% | 59.0% | 52.3% | 50.8% |
売上高原価率がだいたい55%程度。
こちらのほうが、テレビ局の売上高に対するコンテンツ調達費としては正しいような気がするので、55%程度とする。
映画館のコンテンツ調達費
映画館は、映画を消費者に見せるかわりに、入場料を得る。
入場料の50%が劇場の取り分となるため、残り50%がコンテンツ調達費である。
CS放送のコンテンツ調達費
CS放送は、番組を購入あるいは制作して放送し、視聴料その他の収入を得ている。
「通信・放送の在り方に関する懇談会資料 CS放送の状況と課題」2006年3月13日 (株)スカイパーフェクト・コミュニケーションズ 代表取締役社長 重村一
http://www.soumu.go.jp/joho_tsusin/policyreports/chousa/tsushin_hosou/pdf/060313_2_s5.pdf
上記PDFファイルに『CS放送データブック2005』出典として、CS放送の営業収益・営業費用が掲載されている。
CS放送の営業収益が3,117億円、営業費用が2,294億円。そして営業費用のうち、番組制作費が14%、番組購入費が25%を占める。
番組制作費と番組購入費の合計39%をコンテンツ調達費と考えると売上高に対するコンテンツ調達費は
(2,294億×39%)/3,117億=28.7%
となる。
コンテンツ調達費は28.7%といえる。
レンタル店のコンテンツ調達費
ビデオレンタル店では、コンテンツ(DVD等)を仕入れてそれを有料で貸し出すという事業を行っている。
そのため、仕入金額がコンテンツ調達費となる。
JVAの2006年度ビデオレンタル店実態調査(http://www.jva-net.or.jp/report/rental_realities_20.pdf)に売上高原価率が出ている。
大規模店では(略)、売上金額に占める仕入金額の率(売上高原価率)も前年の62.5%から52.0%に減少していることなどから、在庫拡張も終盤にはいってきたことが窺える。
「中規模店では(略)売上高原価率も前年より上昇し56.1%と高いことから、DVD の在庫拡張に注力している様子が窺える。」
在庫拡張中のため売上高原価率が高めという記述があるため、通常ならば売上高原価率が50%くらいと推測できる。
したがって、レンタル店のコンテンツ調達費は売上高の50%といえる。