白組のアニメ製作進出

火曜日に聞いた話。
白組という映像制作会社が、下請けだけでなく、自社コンテンツ製作に乗り出したとのこと。


白組という、主にCMなどのアニメ(2D,3D,ミニチュアによる立体アニメ等)を制作する会社が、この秋の『もやしもん』で1回30分のテレビアニメの制作・製作に進出するそうな。
Sign in - Google Accounts
http://www.kamosuzo.tv/top.html


もともと東映アニメーションでアニメータをしていた人が、30年くらい前に設立した会社とのこと。
主にCMにおけるアニメーション制作や、テレビゲームの3Dムービー制作を行っている。
時間をかけて、予算をかけて、高品質な映像を作り上げることを特長とするクリエイター集団といえよう。


ただ、CMなどの制作によって評判は高くなったものの、受注制作が中心では評判の高さとは裏腹にお金は入ってこない。
受注制作で利益を上げようとすれば制作数を増やすしかなく、従業員数を増やし続けたわけだが利益はなかなか増えない。
そこで、制作した作品に対して権利を持たなくてはならないと、自社でも出資をして権利を得ることを目指し始めた。


一つの転換点が、白組の社員(山崎貴)による映画制作。
助監督等の経験すらない新人が映画監督をするということもあって、企画が成立するまでがとても大変だったらしい。
そこで、自社の社員が監督をすると言うことで、製作委員会に出資したところから自社コンテンツの製作が始まった。
初監督作品『ジュヴナイル』でリクープできるくらいのヒットとなったため、リターナーと続き、そして『Always三丁目の夕日』でスマッシュヒット。白組としてもVFXで制作の重要な部分に参加し、出資も果たした。


『ジュヴナイル』以降の、その映画と並行する形で、会社としてテレビ番組の制作への参加という新たな方向へ進むことになった。
ひとつめが、『リュウケンドー』という子供向けの特撮番組。東映の特撮に対抗して、松竹らが作ろうとしたのだそうな。白組は番組の製作委員会に出資することで、自社のVFX技術を子供に見せるのに加えて玩具商品の販売による収益などの分配を受けられるという、制作事業プラスアルファの価値があるということで製作に参加。
二つめは、『うっかりペネロペ』。NHKの5分アニメ(26話)の製作に参加。こちらは、ペネロペの原作の絵の油絵っぽい特長を残しながらのアニメーションを製作するということで、3Dアニメ制作の技術を活かしつつ、やはり製作委員会に出資をすることでグッズ販売の収益も獲得できるような展開を行った。


そして、この秋からフジテレビの「ノイタミナ」枠にて『もやしもん』の制作・製作。
今まで、テレビアニメシリーズの納品実績がないために、なかなか制作への進出ができなかったが、実験的な試みができる「ノイタミナ」枠で、全11話ということで話が来たのだそうな。
本編の2Dアニメ制作は、別のところがやるものの、OPを実写、EDをミニチュアアニメにして、本編の3D部分の制作を担当することで自社の強みを最大限に利用しつつ制作を行うとのこと。
これも、DVDパッケージの販売とグッズ販売による収益の分配を受けることを狙って製作委員会に出資するとのこと。


自社の制作力を活かしつつ、その周辺(2次利用)における収益の分配を受けることで、良い作品をつくりより多くの利益を得るための自社コンテンツの開発に取組み始めたとの由。
アニメ制作会社で言えば、プロダクションI.G.が同じように下請け制作で実績をつくり、その実績・制作力を元に製作(出資)に進出するという展開を行っている。


クリエイターの才能を切り売りしているだけでは、その才能に見合った収入を得ることができない。
下請け制作会社として続けるという道もあるが、出資による権利ビジネスへの参入というのが一つの打開策としての道筋になるのだろう。


話を聞いていて、プロデューサーの力というのが大きいのかなと感じた。
社長自身がクリエイターであり、作りたいものを作れたらそれでよいとやって来た中で行き詰まった時に、その方向性を変えたのが、映画プロデューサーをしていて白組へ入った人だという印象を受けたためだ。
権利ビジネスを行えるプロデューサーが、アニメも含めテレビ番組の下請け制作会社などへ入って行ければ、少しずつ制作会社の力が大きくなって行けるのかもしれない。