国民投票法案が衆議院通過

経済、株価、ビジネス、政治のニュース:日経電子版

 憲法改正手続きを定める国民投票法案の与党修正案は13日の衆院本会議で、自民、公明両党などの賛成多数で可決され、今国会で成立する見通しとなった。参院では16日に審議入りする。与党は憲法記念日の5月3日までの成立を目指す。

憲法改正のための国民投票法案が衆議院通過。
そのまま参議院も通過し、法案が成立しそうだが、この国民投票法案には、大きな問題点が二つある。

  1. 最低投票率の規定がない。
  2. 条文ごとの投票ではなく、「関連する事項ごとの投票」。

自民党安倍総理の考えとしては、直近でどうしても憲法を改正したいということだと思うが、この国の将来を考えたときに、なかなか酷い法律が成立することになりそうだ。


憲法の役割は、権力者を律することにある。すなわち、憲法を遵守すべきは権力者(立法・行政・司法権者)であり、国民ではない。

権力者を律する憲法の改正は、立法・行政側が発議するもので、権力者と国民という構造を考えた場合には、権力者に都合の良い方向へバイアスがかかることになる。
極端な例を言えば、民主主義の転覆すら可能とする制度であり、その手続きに権力者の利益になる方向にバイアスがかかることを考えれば、憲法改正のための国民投票については改正するためのハードルが高い状態が望ましい。


上記に挙げた二つの問題点を利用することで、そのハードルをずいぶん低くすることができる。
一つ目ついては、国民の関心が薄い状態、国民の理解度が低い状態で憲法改正国民投票を行うことにより、投票率を低くする(たとえば40%)ことで、少数によって過半数を占めることができるようになる。
二つ目について、投票項目を「関連する事項ごとの投票」だとして当然に賛成される項目と賛否両論のある項目を一括して投票させることで、賛成へのバイアスをかけることができる。


もちろん、現状で何か問題が出てくるかと言えば、さすがに酷い問題とはならないような方法が取られることだろう。しかし、「今」の状態を基本に考えて、この国がなくなるまで残るであろう制度を作ることには大きな疑問を感じる。